2020-01-01から1年間の記事一覧

町田くんの世界(石井裕也)

特異な人物の奇矯な振る舞いによって「我々の思う普通って何だろう?」ということが問い直される、というタイプの映画があると思うのですが、それが若者の恋愛ドラマをドライブしていく点で『バタアシ金魚』を思い出しました。 ただ、「浅薄な人の振る舞い」…

オータム・タイガー(ボブ・ラングレー)

凡庸な印象と敵を作らないことでCIAの部長となったタリーは、退官直前に東ドイツの大物の亡命の身元引受けに指名され当惑する。事務官一筋の自分に何故? 時はさかのぼり第二次世界大戦末期、ドイツの情報部将校が極秘作戦のためアメリカの捕虜収容所に潜入…

サマー・オブ・84(フランソワ・シマールほか)

オチありきの映画だったな、という印象でした。(それを言ったらどんな映画であれオチありきなんだけど。) 丁寧な描写の積み重ねはいいのだけど、メリハリがないというか、興味を持続させるための工夫がほしかった。(80年代風、皆さんお好きでしょ?という…

1917 命をかけた伝令(サム・メンデス)

本当は、絶対に映画館で観ないとしかるべき感想が出てこないタイプの作品だと思うのだけど、時期を逸して今アマゾンプライムで見ました。 ワンカット風という作りからもっとリアル寄りの作品じゃないかと予想していたのですが、中盤の廃墟都市のあたりから顕…

日曜の午後はミステリ作家とお茶を(ロバート・ロプレスティ)

ミステリとしてのひねりはそこそこなんだけど、シャンクス氏の気が利いたやり取りが面白くて、ささくれだった気持ちの日常にはちょうど心地よい短編集でした。むしろシャンクス夫妻の日常を描き出すきっかけとして謎かけがあるような、ちょっと主客が転倒し…

ゴースト・エージェント/R.I.P.D.(ロベルト・シュヴェンケ)

びっくりするくらい『メン・イン・ブラック』そのままなので、誰か途中で止めなかったのかな、せめて敵役の設定か作戦にあと一捻り、という話にならなかったのかな、と思いました。それと主要キャラの魅力が薄いのも残念な点で、例えば主人公のメンターたる…

ハンターキラー 潜航せよ(ドノヴァン・マーシュ)

期待せずに見たら存外面白かった!という中堅枠の娯楽作品ってあるけど、この映画は最初からジャストその線を狙ってるので、期待値を上回るほどじゃなかった、と最後の15分を見るまでは思っていたのだけど、最後の最後にめちゃめちゃケレンそのものの展開…

ア・フィルム・アバウト・コーヒー(ブランドン・ローパー)

味が確かに違うと思うので日頃からスペシャルティコーヒーを飲んでいるのだけど、色々な人の手を経てこれがあるのだなと改めて感じました。(本当に大変ですよね。でも考えてみたらお茶もそうなのか。) しかし映画の撮り方自体にはオーガニックとかレインフ…

ヒックとドラゴン 聖地への冒険(ディーン・デュボア)

映画館で観ないと真価が分からない作品というものが明確にありますが(例えば『ブレードランナー』など)、この映画もそうだったのかなと。 というように奥歯に物が挟まったような書き方をしてしまいましたが、正直1作目ほどの興奮がなかったし、(三部作と…

第九軍団のワシ(ケヴィン・マクドナルド)

予算がなかった『レヴェナント』という感じでした。(こちらが製作は先ですが。) ローマ人マーカスとブリトン人エスカは征服者と被征服者の関係だが、その対立を越えて友情を結べるのか?というのが眼目だと思うのだけど、そのためエスカが「私の土地はあな…

誘拐犯(クリストファー・マックァリー)

リアルタイムでも観てたんだけど内容を思い出せなくて、そういえばクリストファー・マックァリーが監督だったんだよな、もう一度見てみようかなと久しぶりに。 基本的には(僕の大好きな)70年代クライムアクション風なんですが、とにかく登場人物の誰一人…

鬼滅の刃:無限列車編(外崎春雄)

(ネタバレ含みます)一本の映画の構成としては正直いびつで、明確な弱点としては、不定形な敵と単調な舞台で戦うバリエーションの少なさのせいで中弛みを起こしているのと、アニメ版から通して観ても煉獄杏寿郎という登場人物に思い入れるだけの描写が十分…

女神の見えざる手(ジョン・マッデン)

オチ解っちゃったアピールは最高にダサいと思うけど、冒頭のシーンで何がしたい話か察してしまったから、ツイストに関する補正なしの分(ここまで本日2回目)、よくできた「仕事もの」だなという感想。劇中『ザ・エージェント』を引き合いに出してるから意…

The Witch/魔女(パク・フンジョン)

全然みんな気付いてないけど、前半の飼葉のくだりは『ジーパーズ・クリーパーズ3』オマージュだな、という半ば冗談を書こうと思ったら同年作品だった!シンクロニシティ!(でも本当に完全に一致してるので興味ある方は是非ご参照ください。) オチ解っちゃっ…

SAFE/セイフ(ボアズ・イェーキン)

ステイサム映画には、無茶苦茶期待しなければ面白く観られる「ほどよい作品」と、そんなに期待してなかったのに「実際観たらすごく面白い作品」があると思うけど、後者だった!!(私が思う後者の例:『パーカー』、『ハミングバード』、『ワイルドカード』…

騎士団長殺し(村上春樹)

『多崎つくる』は普遍的な青春というか、あまり村上作品にないアプローチを感じて好きだったんだけど、この作品はあまりに村上作品要素だらけ(というか、のみ)すぎて、ううむ、となってしまった。 そういえば『1Q84』は掃除人や便利屋みたいな闇を徘徊…

ネメシス(アルバート・ピュン)

ビデオレンタル華やかなりし頃の映画ですが、当時見逃してて今回初めて見ました。まあ…思ってたとおりの内容でしたね(『サイボーグ』などで想像はついてたけど)。 80年代(実際は92年制作だけど)もっさりガンアクションってこうだったよねとか、こう…

TENET テネット(クリストファー・ノーラン)

(ネタバレです。)『ダークナイト』や『ライジング』の冒頭の異様な緊張感を全編に引き伸ばした感じで面白かった。でも物語自体は目的を達成するための支障を解消するための支障を解消するための…みたいに迂回に迂回を重ねるので※、迂遠な上に平仄が合って…

寝ても覚めても(濱口竜介)

(若干ネタバレです)よりによって柴崎作品の中でもこれなのか…というのはあったけどすごく面白かった。何でもないシーンにもずっと不穏な緊張感※があってよかったですね。 物語の枠組みが先にあって、物語の必然に沿って人物が動いているというのじゃなく、…

メッセージマン(コーリー・パーゾン)

引退した殺し屋が、ふとしたことから知り合った母子を守るため、再び暴力の世界に…というこれまでに1000回くらい見た話だけど(もしかしたら『シェーン』なんかもこのジャンルに入れてもいいかもしれない)、とにかく登場人物がいい人悪い奴すべて「自らの能…

ドラキュラZERO(ゲイリー・ショア)

公開時、自分の観測範囲ではほとんど話題になってなかった気がするけど、面白かった。表現の新しい地平を切り開くぜ!みたいな野心はゼロだけど、定番化したVFXアプリの範囲のCGと、出演料はほどほどだけど画面映えする役者陣で「1,800円くらいのランチ…

イエスタデイ(ダニー・ボイル)

リリー・ジェームズってアンドリュー・ガーフィルドに似てるよな…。そういう話ではないというのは最初から分かっていたけれど、ビートルズがいない理由と、しかし主人公だけは覚えている所以を何かしら説明してほしかったな。ほっこり気分だけはお土産でいた…

マイル22(ピーター・バーグ)

匿名性の高い敵がわらわら湧いてくるところは『要塞警察』ものっぽいのだけど、イコ・ウワイスが出てるから(というだけでなくマンション攻城戦も)『ザ・レイド』になっちゃうのがご愛敬※。わかってるって!ちゃんと肉弾戦も押さえてます!と監督がしゃべり…

ラッシュ/プライドと友情(ロン・ハワード)

もしかしたら予算3,000万のインディペンデント映画でも同じテーマを語ることは可能かもしれないけれど、「F1レースの世界で」というのがやっぱりいいんだよね。なぜそう思ったかというと、レース描写は正直地味じゃないですか。というか、実車ベースでCG…

アンダー・ザ・シルバーレイク(デビッド・ロバート・ミッチェル)

行く先々で女の子と寝ちゃうなんて村上春樹っぽいなと思ったんだけど、いや待てよ、本当に村上作品世界の映像化なのではないか。システムに抗う象徴的な王殺し、ヒントをくれる謎の美少女は高級娼婦、行く先は地下、そもそも主人公は何をしてるのかわからな…

パッセンジャーズ(ロドリゴ・ガルシア)

冒頭でいきなり何の話か分かってしまったのだけど、まさか今更あの話をしないよね…と気を取り直して最後まで見てみたらやっぱりあの話だったのでびっくりした。 ☆☆1/2 ※1 ちなみに所謂「あの話」といえばあの映画だけど、あの映画も冒頭で何の話か分かっ…

プロメア(今石洋之)

プロダクションデザインというか、フォント含む全体が過剰にデザインされたつくりなので(80年代リバイバル風)、15分くらいのPVならまだしも、111分は長すぎるかな。中島かずきの脚本が乱暴すぎたのかもしれない。文字通りのデウス・エクス・マキナが登場…

来る(中島哲也)

侮っていた。面白かったです。底意地の悪い演出させたら中島監督は天下一品だな。というのと、真面目な話、謙虚な気持ちになりました。※ ということで、むしろそちらがメインな気もするのだけど、ホラーとしての段取りもちゃんとしててそこもよかったですね…

三の隣は五号室(長嶋有)

作者の近作では毎回同じ感想を書いている気がするけど、今回も手癖で書いている印象が残った。というか、作品を立ち上げる拠り所(これまでだとSNSだったり運転することだったり)として、今回は「アパートの住人の変遷とその時代背景」という枠組みを選…

アス(ジョーダン・ピール)

『ゲット・アウト』も『ステップフォードの妻たち』の気が利いた焼き直しに過ぎない感じだな、と思ったんだけど、テーマというより画作り(雰囲気づくり)の上手さで見せてる監督なのかなという気がしました。変な気分にさせる技術には本当に長けてると思い…