2019-01-01から1年間の記事一覧

ビューティフル・デイ(リン・ラムジー)

観客に咀嚼力を求めるタイプの映画。でも最近の説明過多なつくりと比較すると好ましい印象でした。 過去の贖罪として行方不明者捜索人を続ける主人公、しかし(皮肉にも)幼少期から自らを苛む暴力によってしかそれを達成することができない。そういうギリギ…

ファースト・マン(デイミアン・チャゼル)

スマートフォンとかテレビとか、美しく仕上げられているというだけで何となく故障は基本的にしないものと信じてしまっているけど、その逆で、あんな手作り感溢れる「装置」でよく月に行って戻ってこられると思ったよな、というのが率直な感想。 なぜそのよう…

壊れやすいもの(ニール・ゲイマン)

ジャンルは多岐にわたっていて、どの作品もすごく面白かった。けれども(ジョージ・R・R・マーティンにも同じことを感じるのだけど)、上手すぎてさらっとしてるんですよね。なんか昔の作家だとザラっとした感触があって固有の味わいになっている部分が何か…

ジョーカー(トッド・フィリップス)

どこの世界も世知辛いことになってるな、と感じました。どこでも同じことを感じているんだなと。 アーサーを演じるホアキン・フェニックスは彼の切実さを見事に体現してたけど、考えてみたらホアキンが切実じゃないタイプのキャラクターを演じているの見たこ…

YKKのラジオCMについて

あまり主義主張に関することは書かないようにしているのだけど、ツイッターに書くのも自分のスタンスとして何となくそぐわない気がして、備忘録的にここに書いておきます。 YKKapのラジオCMで、「窓にまつわる思い出深い瞬間を切り取った」という体裁の…

きみに読む物語(ニック・カサヴェテス)

ライアン・ゴズリングの出世作となったのも納得の好演だったのだけど、物語のそのものが凡庸なので見通すのがつらかった。というか僕のような年齢の人間はそもそもお客さんではないのかもしれない。出会うべきタイミングというのはあるものですね。

サスペリア2(完全版)(ダリオ・アルジェント)

リメイク版サスペリアの余勢を駆ってだと思うけど、こちらもアマゾンで配信になっていたので再見。と、いいながら完全版は初めてです。20分も長いからどの部分かと思ったら、ほぼアーシアの母ちゃんの面白キュートな場面に割かれていた。こちらを完全版と…

ホドロフスキーのDUNE(フランク・パヴィッチ)

つくづくホドロフスキーは誇大妄想狂の人なんだと思いました。普通に考えたら実現するはずがない。でもなんか魅力的でもあるのだろうと画面から伝わってきました。(逸話から想像するにジョブズの現実歪曲空間もそういう感じだったのではなかろうか?) とこ…

300 〜帝国の進撃〜(ノーム・ムーロ)

正直、あえて作る必然性のなかった凡庸な続編という印象ですが、『フレンチ・コネクション』が(おそらく)負けっぱなしだとすっきりしない、という理由で続編が作られたような感じだったのかな…。まじめに凡庸さの理由を考えると、前作は戯画化された軍国主…

ハーフネルソン(ライアン・フレック)

「座持ちする」という言い方があるけど、似たような意味で「場持ちする」役者がいると思うんですね。出ていることで、映画に一種の風格をあたえるというか作品のクオリティを担保するというか。登場した途端「この映画は面白くなりそうだぞ」という空気を醸…

サスペリア(ルカ・グァダニーノ)

サスペリアというよりは鬼畜大宴会のリメイクかといった趣の作品でしたね。もっと下世話な感じでよかったし、やはり長すぎる。深遠なテーマゆえに長くなりましたということだったら本末転倒かな。 それとオリジナルの良さはショックシーンのスパッとした鮮や…

未来のミライ(細田守)

この映画も賛否あったように記憶してるけど、『時かけ』や『サマーウォーズ』など過去作にあったような引っかかりは殆ど感じませんでした。むしろ階段を片足ずつ降りてくるような幼児の仕草や、赤子の手のひらの儚い感じ、雪の結晶!などの演出が素晴らしく…

万引き家族(是枝裕和)

パルムドールに相応しい力作だったけど、『楢山節考』しかり、受賞はやはりある種のエキゾチシズムに依拠してる気もして、是枝作品だったら別の映画に授賞してほしかった。 ケイト・ブランシェットが絶賛した安藤サクラはもちろん上手いというか凄まじかった…

ボーダーTシャツ(ラコステ)

実際には所謂ラコステの柔らかい鹿の子素材で出来ているので、クルーネックポロシャツというべきかもしれない。青と赤のボーダーのラインが入ってるところが、懐かしダサい感じで、一周しておしゃれ、というコンセプトだと思う(面倒くさくてすみません)。…

ザ・プレデター(シェーン・ブラック)

公開時に話題になってたけど見逃してしまっていて、今回ようやく見たのですが、控えめに言っても最高でした。 有名な話ですが監督は1作目に端役として出演していて、今回は監督として登板したということで「思えば遠くへ来たもんだ」という感慨もひとしおだ…

ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ(マイケル・ドハティ)

どうしても書かずにはいられないけど、SNSでネタバレはよくないなと思い、ブログで書きます。つまりネタバレ全開です。(否定的感想なので、楽しく観られた方は読まないでください。) ・お母さんはゴジラによって息子を失ったことがどうしても耐えられな…

アベンジャーズ/エンドゲーム(ルッソ兄弟)

<ネタバレです>10年間ありがとう、そういう気持ちで胸がいっぱいになった。正直、ソーのくだりなどでは、まさかこの調子で全編やり抜くつもりなのか…それはそれでチャレンジだけど、と思いもしたのだけれど。 すべての始まりだった『アイアンマン』の功…

ザ・ゲスト(アダム・ウィンガード)

製作者の「80年代映画が好きやねん」という熱い想いに打たれる。最後辺りは『ファンハウス』を思い出したり。丁寧なつくりもいいと思います。 というか、『家族ゲーム』のハリウッドリメイクということでいいんじゃないかな。 ☆☆☆1/2

アトミック・ブロンド(デヴィッド・リーチ)

エスピオナージュというジャンルは、結局、ハードボイルドと同様に形式そのものに淫する在り様を指すのだなと納得しました。 端的に言うと「なんかいろいろな思惑がある勢力が複数入り乱れて、主人公は自分自身もよくわからなくなりました」という枠組みなの…

スリー・ビルボード(マーティン・マクドナー)

『ヒットマンズ・レクイエム』を観て、オフビートという言葉でも上手くいえない変な映画を撮る人だなと思ったのだけど。今作はむしろ舞台でも成立する話だな、というのが第一印象で、事後に実は劇作家として既に名を成した人だったのだと知って、さもありな…

パシフィック・リム: アップライジング(スティーヴン・S・デナイト)

映画としての精度でいえば前作なんだろうけれど(そして実はあまりピンとこなかったのだけど)、子どもが独力でロボット作ってたり、その上いきなりスカウトされたり、ふらふらしてた主人公がいきなり教官になったり、という無茶にもほどがある物語が逆に「…

スピード・レーサー(ウォシャウスキー姉妹)

もっと箸にも棒にもかからない映画かと思っていたら、割合面白かった。展開や理屈の飛躍が過ぎるけど。 アニメでも映画でも、騒がしいガキと動物は苦手なんですが、この映画に関してもやっぱり好きではなかった。けれども、監督たちの「そこは譲れない」とい…

ペンタゴン・ペーパーズ(スティーブン・スピルバーグ)

政治的なイシューって、最終的には決定権のある個人(政府報道双方含む社交界メンバー=現代の貴族階級)の感覚的、感触的な部分で決まることが顕わになっていて、そこが面白かった。だからこそインテリジェンス活動の介入する余地がある、ということでもあ…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(村上春樹)

『ねじまき鳥』以前と以降が僕の中の村上春樹の区分なんだけど、近年の作品では一番好きだった。この作品自体の幻想的要素は控えめだけど、初期の感触に近いというか。普遍的な青春とその喪失の物語ですね。(エピソードとしては極端だけど)青春時代におい…