手塚治虫の戦争(鈴木航)

 最初に書いておくと岡崎体育のよさが際立っていて、こんなに演技ができる人だったのかと瞠目しました。

 役者陣は総じて良くて、とりわけ若手の起用がフレッシュで素晴らしかった。一方、「世事に疎く、良くも悪くも浮世離れしている」という手塚像は、横道世之介的な雰囲気もあって高良健吾の安定の好演でしたね。田中哲司もよかったな。

 さて、ドラマ本編ですが、「紙の砦」と「ゴッドファーザーの息子」を接ぎ木して、現代の手塚による作品として入れ子構造になっている、という枠組みがよくばりすぎだったのか、率直にいって駆け足気味の印象でした。特に「ゴッドファーザーの息子」部分は物語のうまみの部分を全部取りこぼしていたと思います。

 とはいえ、恒例の8月の反戦ドラマとしては、「当時の手塚治虫が世の中の行く末を憂う」という体裁で、作り手たちが、現在進行形の看過できぬ日本の在り様に物申すためにはこうするしかなかった、ということも理解できて。特に「不時着した米軍兵士の顛末」の扱い方は、原作からもあえてトーンを変えていたように、意図されたグロテスクなエピソードとして配置されていて、例えばそれ抜きに「こんな哀しいことを繰り返しては駄目だよね」という抽象的かつ一般的な「反戦」の着地にすることもできたところ、「バランスを欠いてでも今言わなければ」という制作陣の覚悟が伺えました。

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