2024-01-01から1年間の記事一覧

PIG/ピッグ(マイケル・サルノスキ)

いわゆるよくあるニコラス・ケイジものとは一線を画していて、画調も端正だし(見始めてすぐにこれはちょっと違うなと居住まいを正したくらい)、本人も久しぶりにエキセントリックなだけじゃない無言で語る演技をしていましたね。 実は『クワイエット・プレ…

アフターサン(シャーロット・ウェルズ)

淡彩画の趣の作品でした。監督のごく個人的な部分と動機から作られた映画であると一見して分かるけれど、それでいて普遍的な要素がある作品ですね。 この映画でいえば、あの時どこまで自分は父親に寄り添えていたのだろうかという後悔の念はあると思うのだけ…

タクシー運転手(チャン・フン)

韓国映画に力作が多い現代史もの。今作も素晴らしかったです。『義兄弟』の監督だったんですね。再びのタッグのソン・ガンホはいつもどおりの好演。ユ・ヘジンも本当にこういう市井の人の演技がすごくいいですよね。というか役者陣はみなよかった。 主人公の…

真珠湾の冬(ジェイムズ・ケストレル)

手堅い警察小説のような導入から始まって、アジアを股にかけたエスピオナージュに展開し、最後は壮大な大河ドラマになるという、遠くまで連れてこられたなあという感慨。面白かったです。 東京編が結構分量があるのですが、ちょっと『シブミ』的なものを連想…

ザ・ファブル 殺さない殺し屋(江口カン)

邦画のアクションとしてはトップといっていいと思いました。今回はジョン・ウィックというより往年の香港無茶アクションの再現といった風情でしたが、日本の撮影条件でよく頑張ったなと思います。 エモーションの醸成も上手で、前回同様手堅かった(ただ最後…

ラン・ハイド・ファイト(カイル・ランキン)

誰もが夢想する(特にダイ・ハード以降顕著だと思うのですが)「もしこの建物(学校)がテロリストに占拠されたら、どうやって脱出するか?」を映画化した心意気は買いたいと思いました。しかしそこまでだったかな… 正直、主人公の女の子が軍人の父から教え…

こちらあみ子(森井勇佑)

映画は基本的に娯楽として見ているので、現実世界のつらさはフィクションでわざわざ見たくないと渡鬼ですら避けてきた私としては、許容量を超えた話でした。 親は何か専門家に相談なりすべきだなと思いました。 ☆☆

ザ・プレデター(シェーン・ブラック)

やはり一連のシリーズの中では一番好きかもしれない。いちいちセリフが気が利いているし、誰が次の瞬間死ぬのかわからないサバイバルの殺伐さの中で不謹慎ギャグが極まっている。それとアクションの組み立ても立体的で、そうくるか!というギミックも工夫が…

ダイ・ハード(ジョン・マクティアナン)

初めて見たときは、主人公と敵の打つべき手の読み合いが実に巧みで、すごくよく練られた脚本だなと思ったものですが、後から舞台裏を知ったら、実は現場でアドリブで続きを書いていたということで、脚本が緻密だから上手くいくわけでもないから、映画って不…

ゴールデンスランバー(ノ・ドンソク)

韓国版はポリティカルサスペンス版横道世之介という感じだったでしょうか。信じられないくらいのお人よしで、長じるにつれペシミズムに囚われてしまった周囲の人々も、主人公の在り様に感化され「人として正しく生きるとは?」ということを改めて考えること…

鳥は飛ぶのが楽しいか(チャン・ガンミョン)

『極めて私的な超能力』がすごく良かったので読んでみました。大雑把にいうと現代韓国プロレタリア短編小説集なんですが、社会問題への意識の在り方とかその一方でのすっとぼけたユーモアとか、小説界のポン・ジュノという感じがしました。腕も超一級。作者…

サイン(M・ナイト・シャマラン)

シャマラン映画というジャンルがあります。この映画については、テーマも分かるし、演技も上手だし、カメラもよかった。しかし、楽しみ方が正直分からなかったです。という感想になりがちなのがシャマラン映画なのかな、という気が改めてしました。『ハプニ…

FALL/フォール(スコット・マン)

そこそこ低予算ではあると思うのですが、安っぽいところは全くなく、「高いところ怖いですよね」という点に照準を絞り切っているのが潔くかつ成功していたと思います。 ただ、サバイバルになってからは些か通常営業になってしまうので、どうやって打開するの…

フォードvsフェラーリ(ジェームズ・マンゴールド)

控えめに言っても最高でした。個人的には「いい時のマンゴールド」だったなあ。 事実とは異なるそうですが、この映画に限って言えば本当の栄冠は誰に輝いたのか?を敵役であるエンツォが一番理解していたというシーンにグッときましたね。(実際はレース会場…

昔には帰れない(R・A・ラファティ)

最後まで辿り着いてなかったラファティの短編を改めて読み直しました。5人の大人物!とか天才少年少女たち!みたいな展開はいつもどおりなんだけど、正直、出がらし感は否めない。(「素顔のユリーマ」はヒューゴー賞作品だけあって面白いけど。) 初めて読…

工作 黒金星と呼ばれた男(ユン・ジョンビン)

ものすごくお金をかけて(北朝鮮の再現がすごい!!)地味なスパイ映画を作ったなというところに感心しました。政権に都合がいいように北の軍事行動を働きかける作戦を展開していましたが、こういうことって実際にあるんですね。 ところでベネディクト・カン…

破果(ク・ビョンモ)

高齢女性の殺し屋という、キャラクターとしては結構ありがちな設定を主人公に設定して生活のディテールを描く、というところに期待したのだけど、登場人物たちがあまりにステレオタイプだし(トゥの生意気新人描写などはつらかった…)、ストイックなハードボ…

マッドマックス2(ジョージ・ミラー)

小学生の頃から断片的には見ているのだけど、ちゃんと見たのは初めてでした。『デス・ロード』はこれの拡大版セルフリメイクといった感じでしたね。 小学生の時、1作目がカッコよい車が活躍するアクションヒーローものかと思ったら、TVで見て予想外にバイオ…

すずめの戸締まり(新海誠)

自ら設定したテーマに真摯に向かい合っていてすばらしかったと思います。登場人物たちの感情的なコンフリクトの設定も的確で、我知らず引き込まれました(率直にいって涙しました)。いい意味でロードムービーのダレ場、冗長さも程好くあって、ここ最近の大…

放生会(椎名林檎)

放生会(ほうじょうや)って一般名詞なの?と思ったらやっぱり一義的には筥崎宮のお祭りを意図していたみたい。最近活躍中の女性アーティストを招聘しての楽曲がフィーチャーされているアルバムですね。 デビューして25年以上、明らかに林檎チルドレン的な印…

マッドマックス:フュリオサ(ジョージ・ミラー)

最初に結論を書いておくと、前作には及ばないもののすごかった、ということでした。アクションの空間構築が素晴らしい。遠景、接写の組み合わせで、どのようなことがどこで起こっているかスムーズに観客に理解させるというか体感させる手腕。ずっとフュリオ…

ブラッド・ファーザー(ジャン=フランソワ・リシェ)

『ロスト・フライト』が最高だったので、監督の前作はどうだったのかなと見てみたのですが、正直、気が滅入るような行き止まりの掃きだめで生きている人々が殺しあう話なので手放しに面白かった!とはならなかった。しかしながら、こういう犯罪映画は時々見…

極めて私的な超能力(チャン・ガンミョン)

アジアの作家で、日本のポップカルチャーに勢いがあった時代(80~90年代)に影響を受けた世代の作家の作品を読むと、良くも悪くも表層的で物足りないなと思うことが多かったのだけど、それは正に「表層的であること」にアコガレを抱いて※オマージュしている…

MEN 同じ顔の男たち(アレックス・ガーランド)

気持ち悪さが極まっていましたね。ホラー映画ということを踏まえるならばその強烈な印象が残るだけでも成功なのかもしれませんが、ありていに言えば「流行りの」フェミニズム・ホラーなんですよね。その点から評価するなら、物語の端々に現れる不快なシチュ…

最後のジェダイについて

僕は『最後のジェダイ』は(真にエポックメイキングだった最初の三作の意義を抜きにすれば)スター・ウォーズ最高の一作だと思っていて、何周年とか新シリーズにことよせて、みたいなこととは全く関係なく、意見表明というか単純に感想として書いてみんとて…

イコライザー THE FINAL(アントワーン・フークア)

ジェイソンみたいな神出鬼没のモンスターが本当のヒーローだったら面白いんじゃない?という発想の転換がこのシリーズの企画の発端だったと思うのだけど※、いよいよ全面的にその要素を押し出してきたなという印象でした。ためて、ためてからの爆発だったから…

ゴジラ(本多猪四郎)

芹沢博士の中では、最初からオキシジェン・デストロイヤーの使用を決定するというのは自らの死とセットだった、と考えると不憫すぎて泣けました。同時に、現実の原爆もそのようにせめて1回限りの再現性のないものだったらよかったのにという作り手の切実さ…

ゴジラ-1.0(山崎貴)

正直、ドラマパートの演出がむずがゆくなるほど厳しかったです。どうしてああいう感じになるのかな。安藤サクラを比較すると分かりやすいけど、是枝監督などのように「そのような人が話している」という自然な演出は役者のポテンシャル的にも可能なんですよ…

ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃(金子修介)

かねてから見たいと思っていて期待値が上がりすぎていたのか…製作年のせいか東宝というより東映的(というかVシネ的)だな、と思いました。役者が大根すぎ安すぎ。怪獣映画の人間パートってどうしてこういう感じになるのか…まあ演出が悪いからだと思うけど。…

グランツーリスモ(ニール・ブロムカンプ)

「ゲームが実写に近づいたんだから、実写がゲームに近づいてもいいじゃないか!」、対へて曰く「そうですね。」という、それ以上でもそれ以下でもない話だったな、という印象です。 これは作品の出来とは全く関係ないことなんだけど(いやそうでもないか?)…