オンブレ(エルモア・レナード)

 骨太という他ないソリッドなウエスタン。すごく面白かったです。こういう小説が時々読めると最高だな。盗賊団の襲撃に巻き込まれ、駅馬車の乗客として乗り合わせた色々な立場の人が意見を文字通り命がけで戦わせる。最近顕著な左派/右派の衝突のメタファーにも見えてくるのだけど…しかしところが、というのが肝ですね。

 ところで「長距離の移動で疲弊していく登場人物たち」というのは、(ハードボイルドにある種の型があるように)西部劇小説の型なのかな?一緒にじりじり読者まで神経を削られるよう。実は先日読んだ『ミン・スーが犯した幾千もの罪』にもそのような要素があったから、もしやこの小説へのオマージュなのかなと思ったのですが…全然詳しくないので知りたくなりました。

 実は『三時十分発ユマ行き』も収録されていて、こちらも切れ味鋭い短編で、お得な気分になりました。映画原作であることは知っていたけれど、町での盗賊団との攻防だけの話だったんですね。映画は両方みているけど(どちらも傑作!)、やっぱりリメイクは映画の方のリメイクだったということかな。

☆☆☆☆

ローラーボール(ノーマン・ジュイソン)

 カルト映画になるべくしてなったというか、狙ったわけじゃない「天然もの」の匂いがする作品でした。そのルールが面白いんだかどうだかわからない暴力スポーツ「ローラーボール」も微妙だけど、ディストピアですよ!と煽ってくる割りに実態が判然としない企業連合に統治された未来もピンとこない。雰囲気としては『パララックス・ビュー』みたいなポリティカル・スリラーだったり、『ザルドス』みたいな陰鬱な未来のトーンなんだけど、具体性がないから今一つ飲み込めないんですよね(そんなに主人公の存在が疎ましいのだったら、ゲームを通してみたいな回りくどいことをせずに直接排除したらよかったのに、と思う)。あと東京チームを馬鹿にするのがちょっと許しがたい演出なんだけど、あちらから見たバブル前夜で存在感を増してくる日本の不気味さってこんな感じだったのかもしれませんね。

☆☆1/2

ザ・ロストシティ(アーロン・ニー、アダム・ニー)

 もともとの秘境ものとしては『ロスト・シティZ』を踏まえているのかな、と思うのだけど、ジャンルとしては完全に『ロマンシング・ストーン』の現代版ですね。知らなかったけどキャストが贅沢で、ブラッド・ピットの使い方が贅沢だし、ダニエル・ラドクリフはすっかり変化球の人になってしまったな…(血走った目がなんだか定番になってきたような?)それとやっぱりサンドラ・ブロック力でありチャニング・テイタム力なんだろうな。

 全体としては配慮の行き届いた娯楽作。このちょうどいい感じは、ありそうでなかなかないなと思いました。とくにそれを象徴するのが守護天使のように登場するヤギ飼いのオスカーで、「あなたって天使みたいね」と投げかけられて「え、どうして知っているの?」と返すような絶妙なはずしかた。このあたりはぜひ実際に見ていただきたいところなんですが、いちいちセリフが気が利いているのだけど、これ見よがしじゃないラインをずっとキープしていて、面白くなりすぎない感じ、不思議と新鮮でした。

☆☆☆1/2

22ジャンプストリート(フィル・ロード、クリストファー・ミラー)

 ひとつひとつはしょうもないギャグなんだけど、執拗に繰り返されるためについには笑うしかない、という前作同様のコメディ。なかなか下品だし、少し前の映画だけど当時としてもかなりギリギリの線を狙ったネタが多いかなと思いました。そういう意味では主演2人のキャラに救われている部分も大きい気がします。結構好きです。

☆☆☆1/2

ヴァチカンのエクソシスト(ジュリアス・エイヴァリー)

 いい湯加減の娯楽作品。ところでエクソシストものって実話ベースじゃないといけないの?と思ったり。ともあれラッセル・クロウの座持ちする存在感に感嘆。あと被害を被る娘さんがヘイリー・スタインフェルドみたいだなと思ったり、息子の方の特異な相貌が効いてたなと思ったり。面白かったですよ。

☆☆☆1/2

愚者の街(ロス・トーマス)

 ロス・トーマス作品は初めて読むのですが、というか恥ずかしながら今回初めて知ったのですが、最高に面白かったです。

 突飛で奇矯な造形のキャラクターが繚乱でグロテスクな物語が展開するところは、ウィリアム・ゴールドマンの作品を連想しました。ノワールの現在、ビルドゥングスロマンの幼少期、エスピオナージュの過去、が輻輳しつつ緊張感を失わない巧みな構成が素晴らしかった。

 その一方で主人公ダイの数奇な来歴がかなり読ませどころなのだけど、ちょっとトレヴェニアンのシブミっぽい感じがしました。

 悪者たちが相食むクライム・サスペンスというのは、概要だけ見ればよくある話と思うのだけど、「組織」というものの政治的な振る舞いとその衝突の描写に突出したリアリティがあり(思わぬ発端から動き出す状況)、加えて、過剰に構築されているのに不思議と現実味のある登場人物たち。これらには作者の経歴とその見聞が活かされているのだろうなと思いました。

☆☆☆☆

※ところで(原著がそうなんだと思うけど)明らかな瑕疵がひとつあって、2人目の「生贄」にされる登場人物の新聞記事が1人目と同じになっているんですよね。編集担当の人は気づかなかったのかな…

チャーリーズ・エンジェル(エリザベス・バンクス)

 マックGの映画化が快調だった記憶がまだ強いので、今作はシリアスにしたいのかお気楽おもしろ路線なのか、いささか中途半端な印象でした。ありていにいってガールズ・エンパワメント路線を狙っているのだろうと思うのだけど、それは主人公たちが格好良ければ自ずと観客に伝わるものであって、映画の側からこれどうですか!と言われたら白けてしまうよなあ…

☆☆☆