2004-01-01から1年間の記事一覧

ココニイルコト(長澤雅彦)

真中瞳がいかにも「不倫してる女の子」っぽい(俺のイメージのなかで)という時点で個人的には既に成功していると思った。それは半分冗談として、友人でもなく、恋人でもなく、というポジションの男女の関係がよく描けていた。(邦画監督のマトリクスを書く…

マスター・アンド・コマンダー(ピーター・ウィアー)

「正統派海洋冒険もの」としてちゃんとしたつくりになっていることに驚いた。船上での日常生活がメインで、しかも2時間を越える大作なのに、ダレを感じさせないメリハリの効いた演出が素晴らしい。それはアクションだけでなく、船内の人間関係のストラテジ…

ブラック・ハウス(S・キング、ピーター・ストラウブ)

随分前に前作「タリスマン」を読んだ。新潮文庫から出ていて、帯を糸井重里が書いていた。「私はタリスマンのセールスマンになってもいいと思っている。とにかくおもしろいぞ」だったかな。うろ覚えなんだけど、そんな感じだったと記憶している。一行何千万…

AVP<エイリアン・バーサス・プレデター>(P・アンダーソン)

大雑把にいって公開前の批評家筋の評判は芳しくないものだったと思う。しかし彼らはエイリアンやプレデターの映画に何を求めていたのか?この作品には観客が見たいものが過不足なく詰め込まれている。いやせっかくだからサービス精神は旺盛だと書いておこう…

DS

ニンテンドーの勝負球であるDSが発売され、いろいろソフトのラインナップが公開されてますが、それはさておきウタダの胸の谷間に言及されることが多いね。実際に眼にしたことがなかったので今まであまりピンとこなかったんだけど、今日初めて見ました。 ・…

タイトルバック

メタルギア・ソリッド・3のタイトルバックがカイル・クーパーと聞いてちょっと期待してたんだけど、それほどでもなくて残念。ところでタイトルバックで思い出したが、Mr.インクレディブルのエンドロールがこれまた最高だったのだった。そもそも作品の意…

殺人の追憶(ポン・ジュノ)

衝撃的。「吠える犬は噛まない」は新人ながら驚くべき完成度で、それは年齢の割りに老成したスタイルという意味での「完成度」ではなく、チャレンジングなつくりでありながら全体としての水準も高い、というデビューとしては最も望ましい形のものだった。今…

順列都市(グレッグ・イーガン)

短篇集しか今まで読んだことがなくて、読んだ時には、このボリュームにこのアイディア数は多すぎてもったいない!と思わず読者側なのに貧乏根性を出してしまうほどだったのである。だから長編でちょうどいい按配だと思っていた。今作を読むまでは。 またジャ…

Mr.インクレディブル(ブラッド・バード)

アイアン・ジャイアントで観客の涙を搾り取ったバード監督と、子供のみならず大人の鑑賞に堪えるクオリティの物語づくりで定評のあるピクサーが組む!という夢のようなプロジェクト。心待ちにしていたこの作品をようやく観たのですが・・・ 素晴らしいのひと…

JET SOUNDS(ニコラ・コンテ)

遡ってみました。思ったよりラウンジ寄りなテイストである。この路線を期待してアザー・ディレクションズを買った人はビックリだったろうな。僕は順序が逆になったのでジャズが本分の人だとばかり思っていたのですが。まあライナーを読むとどちらがメインと…

春の惑い(田壮壮)

ある地方都市の旧家。その広い屋敷に住むのは、身体をこわしてこもりがちな若主人とその妻、女学生の妹と先代からの使用人だけだった。その時間が止まったような暮らしにある日変化が訪れる。それは主人の旧い親友の訪問。しかし彼は、妻のかつての恋人でも…

Me-imi(岡村靖幸)

個人名義ではものすごく久しぶり。石野卓球とのコラボアルバムが個人的には今ひとつだったので、今回はどうなることやらと思っていたのだが。 「モン−シロ」や「ファミリーチャイム」に過去の楽曲の残り香が感じられただけで、正直なところ、トータルではウ…

ツインズ・エフェクト(ダンテ・ラム)

香港の辻・加護ことツインズ主演のアイドルアクション映画。ツインズという人たちを見るのは初めてだったんだけど、トップアイドルなのに垢抜けない感じがするのは確かにハロプロ系。でも直接的によく似てるのは高島彩かと。アイドル映画なのにちゃんとアク…

サンマルク

エスプレッソマシンを購入してしまうくらい(似非)コーヒーマニアな僕なのだけれども、実はスタバはあまり好きじゃない。行きつけのカフェでも、本当はそこのコーヒー目当てではなくて、読書しててもほっといてくれるのでボーっとしにいってるだけ。 そう、…

アザー・ディレクションズ(ニコラ・コンテ)

ジャンルとしてはクラブ寄りのジャズ、ボサが好きなもので、DJ兼プロデューサーの人が手がけたアルバムは結構好みではないかと聴いてみた。結論から言うと想像してた以上に正統派である。なるほどブルーノートのレーベルから出てるだけのことはある。最近…

座頭市 血煙り街道(三隅研次)

娯楽作品として大変よくできている。この頃の映画の予算規模というのは現在と比較してどの程度のものだったのか。とにかく画面の隅々まで心配りが行き届いている、という印象を受ける。こういう「しっかりした」邦画作品がまた観たいものである。王道。子連…

ニューオーリンズ・トライアル(ゲイリー・フレダー)

監督は「コレクター」(モーフリの方)、「デンバーに死す時」「クローン」というフィルモグラフィが示すように今ひとつピリッとしないサスペンスを撮る職人監督というイメージ。しかも何となくゲイリー・グレイ(「交渉人」「ミニミニ大作戦(新)」)、グ…

リーグ・オブ・レジェンド(スティーブン・ノリントン)

思いのほか面白かった。随分不評だったので、殆ど期待せずに観てみたら。 キャラクターは過去の名作からのいただきで、名前以上の奥行きはまったくといっていいほどないのだけど、こういうB級アクション(予算的にはA級でも)の登場人物としては差し支えな…

わたしはロボット<創元SF版>(アイザック・アシモフ)

子供の時分に読んだ時は非常に面白かった印象があったのだけども。 今回は直前に「ロボットの時代」(ハヤカワSF版)を読んで、そちらが大変面白かったのでちょっと肩透かしの印象。世間的な評価はこちらの方が高いのだろうけど、訳文が硬いせいか、自ら課…

バスと不意打ち

昨日バスに乗った時、回数券を買おうとしたら運転手にタメ口きかれてビビッた、というかショックだった。それが例えばおっちゃんだったらまあある種の親しさ表現ということで「あり」だったかもしれないが。いやそういうことじゃなかった、年齢ではなくてニ…

恋の門(松尾スズキ)

久しぶりに変なもん見た・・・と微妙な気持ちになる作品だった。まあ毒にもクスリにもならないような凡庸なものよりも、何かしら揺さぶられる方が観た甲斐はあるというものかもしれない。 まず、舞台の呼吸で演出されているのが違和感というかこそばゆい感じ…

ビートル・ジュース(ティム・バートン)

友人にゴスとは?と尋ねられ、サンプルとしてこの映画のヒロインとして登場するウィノナ・ライダーが典型と紹介したのだが、映画の内容を説明しているうちにまた見たくなって。初めて見たのは中学生の時で、それ以来ちゃんと観たことはなかったにも関わらず…

シャレード(ジョナサン・デミ)

なんだか訳の分からない映画だった。あまりそちら方面に明るくないものでよく分からないのだけれども、あれはヌーベル・ヴァーグのパロディだったのでしょうか?気がついたものを挙げると、登場人物としてアンナ・カリーナ、シャルル・アズナブール→「ピアニ…

アイデン&ティティ(田口トモロヲ)

原作の再現度は非常に高いけれど、映画単体としてみたら残念な出来であった。思うに、監督が役者でなく、ばちかぶりのトモロヲとして対象にベッタリ寄り過ぎて、物語を相対化できなかったためである。こんなのはロックじゃない、といつも苛立ち、そのくせそ…

お母さんの恋人(伊井直行)

お母さんとお父さんが出会ったとき、お母さんは三十六歳だった。お父さんには物心つくまえからの友人がいて、ふたりは十七歳だった・・・というモノローグで始まる、ある愛の物語。この語り手は主人公たちの娘である。その彼女が時々「地の文」に顔を出した…

ヘルボーイ(ギレルモ・デル・トロ)

ブレイド2は雇われ仕事で、ヘルボーイのためのウォーミングアップさ、とうそぶいていたトロ監督。ブレイド2はそれにしてはいい仕事してたなあ、最後ちょっと失速気味だったけど。という印象だったのだけど、ジャスト同じ感想である。要するに、ガジェット…

ロボットの時代(アイザック・アシモフ)

久しぶりに短篇の醍醐味を堪能した。つまるところアシモフのロボットもの短篇は、「ロボット3原則」というしばりを設けた上で、それが破られた(かに見える)状況がいかにして現出したのかという謎を、スーザン・キャルヴィンという探偵が論理的に解決する…

太陽の塔(森見登美彦)

大学時代を懐かしく思い出した。その時代を通過してきた人みんなが、何かしら心当たりのある風景に出会える作品ではないだろうか。ただ処女作であるからして、技術的な側面からすると「大学のサークルの面白い先輩(後輩)が部の雑記帳(大学ノート)にいつ…

スペシャリストの帽子(ケリー・リンク)

すごく引き出しが多い人である。 どの短篇もスタイルが違い、なおかつ高水準。わかったような、わからないような抽象的な物語が多いのだが、しかし何だか惹かれるものがある。ただ、表題作である「スペシャリストの帽子」や「カーネーション、リリー、リリー…

サンドウィッチ

村上春樹の小説に登場する食べ物は、シンプルなのにすごくおいしそうである。とりわけサンドイッチは。(表題は気取り気味に、何となく村上風に「サンドウィッチ」にしましたよ。)読者の「一度食べてみたい」という夢想を誘わずにおかない村上サンドイッチ…