読書
前作『鋼鉄都市』も一種のミステリではあったけれど、今回は時代もあって「ノワール」色が濃厚でした(ファム・ファタールも登場するし)。そうなると語りが必然的に一人称寄りになっていくので、相棒のロボット、ダニールが後景化していくのがちょっと物足…
手に取ったのは、ふとアシモフのロボットものを読みたいな、と思っていた時に、アンディ・ウィアーが『鋼鉄都市』を薦めていたから。ものすごく面白かったです。 ロボットものとしては、推理に軸足のある短編と違って、「宇宙に進出した未来」という「if」か…
順番でいえば「おいしい文藝」の第2弾になりますが、まだ手探りだったのか、食べ物を切り口にした幅広い射程で人間、世界を捉えた随筆、みたいな広がりは感じられませんでした。想定内の普通のラーメンコラム。 ところで馳星周のエッセイは、芸風というのは…
(ネタバレ)前半の心理戦が面白かっただけに、後半の展開はどうしてそうなる?というガッカリ展開でした。せめて真の悪人に一泡吹かせてほしかったですね。娯楽を目的とした作品ならそこまでやり切ってほしいというか。こんなつらい話になると思わなかった…
(ネタバレありです。)新潮の「海外名作発掘」シリーズの中でも最近の話題作だったと思いますが、なるほど傑作でした。「犯人を追うサスペンス」→「少女の投身自殺を食い止められるかスリラー」と、前半と後半でジャンルがスライドするところも面白かったで…
著者の作品は、エッセイは読んだことがあったけれど小説は初めてでした。最初の印象は「長嶋有」みたいだな、というもの(そこでいうと、エッセイの時点で、ブルボン小林的だなと思っていたのですが)。ただ、長嶋有がコンセプトから小説を構築するような方…
「おいしい文藝」シリーズ、今回は寿司、鮨、鮓そしてすしがテーマですね。音だけだと「すし」だけど、表記するところは調理法を示しているので、厳格にいうとやはり別種の料理なのかもしれません。 テーマがテーマだけに、かつて幅を利かせていた「文壇のう…
父を殺された印刷工見習いの青年が、その犯人を大都会シカゴで追い求める過程で大人へと成長していく、という物語。 なんですが、瑞々しい一人称の語り口とさわやか風な結末でつい誤魔化されてしまうけれど、客観的に事の経緯(と背景)を考えるとなかなかに…
「おいしい文藝」シリーズのパン編ですね。先日読んだコーヒー編は、コーヒーという飲み物の魅力にフォーカスした、いわば純然たる食エッセイを採ったものでしたが、(こちらの方がシリーズのナンバリングとしては早いのだけど)パンは切っ掛けであって別の…
実際にあった事件を踏まえて、雷がキリンに落ちてどうするんだよ(もっとましなものあっただろ)、という意味だったんですね。それはさておき、ネットネイティブ世代のエッセイ(というか短文)の書き手だな、というのと、長嶋有/ブルボン小林の在り様をロ…
食にまつわる随筆、エッセイ選集のシリーズ「おいしい文藝」のコーヒーがテーマの1冊。そういえばエッセイでもコラムでもなく、「随筆」というジャンルはもう存在しないような気がします。それはやっぱり作家「先生」という幻想の土壌がなくなったせいなの…
作者の中でもかなり末期の作品になるのでしょうか。数をある程度読んでくると、ちょっと手癖で書いているような印象が残りました。マッコークルとパディロのコンビだからアクションに期待したけど、コンゲーム重視だったかな。 それにしても、肝心の手記とメ…
初めて読んだ著者の作品『愚者の街』が、アクションあり、謎解きあり、エスピオナージュでもありの、しかも大河小説だったから最高すぎて、どの作品もとても面白いのだけど、どうしてもあのインパクトを超えられないですね…マッコークルとパディロのコンビシ…
引き続きスモール・ビア・プレスから刊行されただけあって、(かつての)ケリー・リンク的な雰囲気が増していたかなという印象。しかしながら残念だったのは、『いずれ全ては海の中に』にあった奇想とかSFならではのセンス・オブ・ワンダーが後退していたこ…
レナート・バルディの『モダンサッカーの教科書』を読んで、現代のサッカーにおける戦術の基礎知識として蒙を啓かれたのですが、ほとんど全く同じことが中学生以上向けくらいに書かれていて、改めてなるほど!となりました。(実際、小学校高学年でも理解で…
サッカーの戦術みたいな側面も少しずつ知識を増やしていっているところなのですが、海外のクラブ事情が気になって手に取りました。 僕が海外のサッカーに触れたのは中学生の時のメキシコW杯のマラドーナの「神の手」かつ「5人抜き」が最初のトピックスかな…
現代サッカーの基本的な戦術であるポジショナル・サッカーの基本的な知識が分かりやすく説明されていました。理解しやすいのは対談形式だからかもしれません。ちょっと残念だけど図解が少ないので、前提となるサッカー用語はある程度理解していないといけな…
(ネタバレ)『深夜プラス1』は研ぎ澄まされたソリッドかつストイックな筋運びで大好きなのですが、こちらは物語がどこに着地するのか分からないまま小事件が頻発して、最後に至って種々の要素が「そういうことだったのか!」という結末に収斂するというエ…
前に読んだ時は人工知能対野蛮な人類というストレートな大冒険活劇で、ラファティの長編としては一番分かりやすいな、という印象だったのですが、今回改めて読んでみると、結末のジャンプでいきなりものすごく抽象的、観念的、神話的な世界に突入するから、…
殺し屋ランキングの世界ということで、『殺しの烙印』というかつまり『深夜プラス1』のアクション増量現代版みたいな話でした。(ちなみにウイスキーの白州が登場するくらいだから作者は見てると思う。)よくある話だけど、語りがつつがなくてするするスム…
日本人作家の旅行記の体裁で日本統治下の台湾の女性ふたりの「友情」を描く、という物語。日本の作家といわれても違和感がないくらいディテールが徹底していて、台湾の作家の手によるもの、ということが先ずはすごかったです。 台湾の比較的若い作家が今改め…
タイトルで察されるとおり、サッカー版『マネー・ボール』(序章)たらんと書かれた本。惹句として示される「ロングボール」が戦略として現在も有効か?とか、コーナーキックは果たしてもてはやされるほどに有効なチャンスなのか?といったキャッチーなイシ…
各国代表の特徴を端的に説明してくれる図鑑スタイルのガイドブック。アメリカ・カナダ・メキシコ大会に向けて勉強のつもりで読みました。概ね自分の印象の再確認という感じでしたが、監督による戦略スタイルの変遷や、(この本はカタール大会直前に書かれた…
短編集として収録されている5編は、読ませる工夫はあるものの正直若干もの足りないな、という印象だったのですが、書き下ろし中編かつ表題作として最後に配置されている「嘘と正典」はテーマと技術が両立している充実感があって高評価も納得の作品でした。 …
『サッカー観戦バイブル』と並行して読んでいたのですが、こちらの本は図解などがないトークセッションなので、こちらだけだと素人にはポジションなどのイメージが難しかったと思うので、補完されてちょうどよかったです。対象とする時期的にも結構重なって…
『アナリシス・アイ』が悪い意味で新書らしい、文章も練られておらず、図解も中途半端なつくりだったのに比べて、用語の補足のみならず、ポジションの代名詞とされるような名選手まで脚注でフォローされていて、図解も分かりやすいし、初心者向けの戦術指南…
映画原作で「ファーストコンタクトもの」の古典、という知識だけはあったのだけど、陰鬱で難解な思索系SFかと思いきや、西欧的で洗練された洒脱な作品だったから、読んでみないと分からないものですね。(タルコフスキーとソ連というキーワードに引っ張られ…
明の皇太子・朱瞻基は皇帝の命で首都の北京から南京へと遣わされるが、到着と同時に船を爆破され、辛くも逃げ延びる。続いて届く皇帝危篤の報。いったい誰の企みなのか?太子は南京で出会った捕吏、官吏、謎の女医らと共に脱出し北京を目指す。タイムリミッ…
階級社会の面倒くささ、文壇のいやらしさ、みたいなややこしい人間関係を描き出すタッチに何となく三島由紀夫を連想しました。(あそこまでペダンティックではないけれど。) かつて愛した(というよりあこがれた)奔放な女性ロウジーの人間像を、その本質を…
(ネタバレします。)自国の息苦しさに堪えかねて、新天地としての外国(オーストラリア)を目指す話。元新聞記者の作者らしい、おそらく綿密なリサーチに基づいた苦い青春の物語でした。(これまでに読んだ中だと『鳥は飛ぶのが楽しいか』の中の一篇を長編…