ハント(イ・ジョンジェ)

初監督作かつ脚本も、ということで頑張っていたと思います。これだけできれば立派だなそつがないな、と思うものの、演出としてじっくり見せる感じは少し乏しくて、映画って難しいなと思いました。 ツイストはなかなかよくできていて、実は『インファナル・ア…

獣兵衛忍風帖(川尻善昭)

『バンパイアハンターD』がすごく良かったのと『妖獣都市』は一応見ている、それと「アニマトリックス」ぐらい、かな…というのが見たことがある川尻作品のほぼ全てなのですが、名前のみ知っていた、そして海外での評判が高いと聞いているこの作品がアマゾン…

プレデター:バッドランド(ダン・トラクテンバーグ)

『ザ・プレイ』がその世間的高評価にも関わらずピンとこなかったので(なんというかいかにもディズニー的「弱者をエンパワメント」マーケティングオリエンテッドな感じが居心地が悪いというか、どうですか!と言われてる感じがして)、今作も若干心配だった…

トマス・モアの大冒険: パスト・マスター(R.A.ラファティ)

前に読んだ時は人工知能対野蛮な人類というストレートな大冒険活劇で、ラファティの長編としては一番分かりやすいな、という印象だったのですが、今回改めて読んでみると、結末のジャンプでいきなりものすごく抽象的、観念的、神話的な世界に突入するから、…

ウィキッド(ジョン・M・チュウ)

高い評判を聞いて期待しすぎたのかな…正直、物語を通してエルファバを全面的に支えてくれる人が誰もいないのが辛過ぎた印象です。親も妹も自己憐憫に終始して、愛情が本当に必要な時に気づいてもいない(特にあれだけ(本人自身が過酷な境遇の)姉から愛情を…

クレイヴン・ザ・ハンター(J・C・チャンダー)

「超」大作ではないほどほどの大作として、毎回ほどほどの満足感を味わわせてくれることで毎度お馴染みのスパイダーマン・ユニバースですが、今回はかなり面白かったですね。監督がよかったんじゃないかな。 身体一つでなんでも突破してやるぜ、という冒頭の…

M3GAN/ミーガン 2.0(ジェラルド・ジョンストン)

(ネタバレ)ジャンルがシフトする2作目という点で『ハッピー・デス・デイ2U』を思い出したりしたのだけど、というかより有り体に言うと『T2』なんだけど、コケたのが信じられないほどよくできた作品でした。状況を打開するのに格闘術が必要になる、という…

M3GAN/ミーガン(ジェラルド・ジョンストン)

評判は聞いていたのですが、「とはいえ古くからあるホラーの定型の「恐るべき子ども」のアップデート版でしょ?」という侮りがどこかにあって、今頃見たのですが、よくできてる!すみませんなるほど高評価も納得でした。 冒頭の、子どものためのスキーなのに…

ウィリーズ・ワンダーランド(ケビン・ルイス)

どう見ても「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」なので、本家元祖闘争が発生しそうなものだけど、そういった記事は目にしませんね。しかも監督は同作からインスパイアされたと公言しているらしいのだけど… しかしながら、最大の違いはニコラス・ケイ…

プレイ・ダーティ(シェーン・ブラック)

劇中、主人公がパーカーと呼ばれて初めて「ああこれって悪党パーカーの映画化なのか」と気付いた次第。シリーズの小説の方はまだ読んだことがないのだけど、これまでの映画化作品の雰囲気からすると、筋を通すことにどこまでもこだわる男、こうと決めたらど…

スマイル(パーカー・フィン)

系譜としては『リング』、『CURE』比較的最近なら『イット・フォローズ』みたいに、死にまつわる「何か」が伝播していくというタイプのホラーですね。伝播のルールは何なのか?「何か」とはどういう存在なのか?を主人公が追求していく過程を描くことで物語…

柔道龍虎房(ジョニー・トー)

監督のファンの間では名作の誉高いタイトルですが、その分アート的要素も強いですよね。ジョニー・トーは邦画だけでなく、ヌーヴェルバーグの影響も結構大きいと思うのですが、改めて見てみてその思いを強くしました。 とにかく話が脱線しまくるし、というか…

エージェント17(ジョン・ブロウンロウ)

殺し屋ランキングの世界ということで、『殺しの烙印』というかつまり『深夜プラス1』のアクション増量現代版みたいな話でした。(ちなみにウイスキーの白州が登場するくらいだから作者は見てると思う。)よくある話だけど、語りがつつがなくてするするスム…

ベテラン(リュ・スンワン)

実は一度チャレンジしていて、悪役の外道ぶりに見ていられなくなった、ということがあったのですが、今回は最後まで見通しました。悪役はやっぱりクズ中のクズだったけど、主人公の粘り強さと悪を憎む心がストレートに伝わってきて、しかもそのグルーヴがそ…

台湾漫遊鉄道のふたり(楊 双子)

日本人作家の旅行記の体裁で日本統治下の台湾の女性ふたりの「友情」を描く、という物語。日本の作家といわれても違和感がないくらいディテールが徹底していて、台湾の作家の手によるもの、ということが先ずはすごかったです。 台湾の比較的若い作家が今改め…

サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか(クリス・アンダーセン、デイビッド・サリー)

タイトルで察されるとおり、サッカー版『マネー・ボール』(序章)たらんと書かれた本。惹句として示される「ロングボール」が戦略として現在も有効か?とか、コーナーキックは果たしてもてはやされるほどに有効なチャンスなのか?といったキャッチーなイシ…

フットボール代表プレースタイル図鑑(西部謙司)

各国代表の特徴を端的に説明してくれる図鑑スタイルのガイドブック。アメリカ・カナダ・メキシコ大会に向けて勉強のつもりで読みました。概ね自分の印象の再確認という感じでしたが、監督による戦略スタイルの変遷や、(この本はカタール大会直前に書かれた…

アイスロード リベンジ(ジョナサン・ヘンズリー)

ファン・ビンビンがキャスティングされている時点で嫌な予感があったけど、実際見てみるともっとひどかったというか、いくらなんでも中国に配慮しすぎだろう。それと国の情勢として色々問題はあるのかもしれないけれど、描写が全体的にネパールの人に失礼す…

野獣の血(チョン・ミョングァン)

韓国ノワールの洗練ここに極まれり、という感じですごく良かったです。例えば『名もなき野良犬の輪舞』などはまだちょっと格好つけているところがあったけど、荒々しいままでいいんだというシンプルさが好みでした。 ☆☆☆1/2

オーメン:ザ・ファースト(アルカシャ・スティーブンソン)

ダミアンに至る計画は、割とよくできているような、理屈に無理があるような…ちょっと『アルキメデスの大戦』を思い出しました。ネル・タイガー・フリーさんは雰囲気もパフォーマンスも最高だったですね。 ☆☆☆1/2

夜明けのすべて(三宅唱)

このような社会であったら多少なりとも生きていきやすいだろうけれど、と思いました。しかし現実問題として考えた時に、あのような理不尽な言葉をぶつけられてなお、病気のせいだから仕方ないな、と受け止めるのは難しいだろうな、とも正直思いました。 それ…

マキシーン(タイ・ウェスト)

80年代リバイバルかと思いきや、舞台こそそうだけどあまりその側面は強調されていなかったような。実は1作目、2作目について世間で言われるほど感心していなかったので、最後まで見ておくか、という気分だったのだけど、意外と最終作が一番面白かったで…

ヘラクレス(ブレット・ラトナー)

早い段階で『七人の侍』がやりたいのか…もう100回くらい観たな、とは思うのだけど、演者が魅力的なのと安定感のある演出でそれなりに面白かったですね。(グラフィックノベルが原作のようですが、そちらも『七人の侍』なのかな?)ヘラクレスが実在の人物…

ヴェノム:ザ・ラストダンス(ケリー・マーセル)

びっくりするくらいこじんまりした規模の物語になっていて、しかし身の丈にあった完結を選んだということについては好印象でした。前作は全然乗れなかったのだけど、今回は約束の地を目指すロードムービーになっていて、自ずと二人を中心としたシンプルな筋…

ヒットマンズ・ボディガード(パトリック・ヒューズ)

「殺しを生業にしている男にボディガードが付く、という設定が面白い」という企画だったんですね。横文字タイトルだからその点をスルーしていて、始まってしばらくするまで気付かなかったのは迂闊でした。 ところで評判がよいのは何となく知っていたのだけど…

教皇選挙(エドワード・ベルガー)

撮影、美術、音楽、もちろん脚本と、これ見よがしなところのない、「過不足ない」ことの美点が十全に発揮された映画だったと思います。 普段の映画の指向に関わらず、多くの観客がこれは面白かった!となるポイントは、終わってみれば前教皇の蒔いた種(スキ…

嘘と正典(小川哲)

短編集として収録されている5編は、読ませる工夫はあるものの正直若干もの足りないな、という印象だったのですが、書き下ろし中編かつ表題作として最後に配置されている「嘘と正典」はテーマと技術が両立している充実感があって高評価も納得の作品でした。 …

コンフィデンシャル:国際共助捜査(イ・ソクフン)

北朝鮮の覚醒剤(氷毒<ピンドゥ>)コネクションを舞台にした『我らが願いは戦争』について、作者のチャン・ガンミョンが『愛の不時着』を踏まえて、(北の特殊工作員である)主人公は演じてくれるならヒョンビンがいいなと言っていたのだけど、ここにきて…

ゴジラxコング 新たなる帝国(アダム・ウィンガード)

話がゆるすぎてもはや昔のこども向けアニメだな、チャンピオンまつりだなと思いました。本当は相当世間に影響が出てそうな怪獣プロレスだったけれど、吹き飛ばされる車がおそらくわざとミニチュアっぽく撮られていることからもその印象を強めました。 ところ…

今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は(大九明子)

話題の映画ですが、なるほどすごかった。というかすさまじかったです。 作品としては、共感性羞恥というか、「どこで俺のことを見ていたんだ?」というようないたたまれなさすら感じる(経験してない仮想の青春を生き直すような)、リアルでみっともない大学…