2007-01-01から1年間の記事一覧

狐になった奥様(デイヴィッド・ガーネット)

良家の出身であるテブリック夫妻は、結婚して数年たった今も恋人のような中睦まじさだった。いつものように散歩にでたある日、突然妻のシルヴィアが狐に変身してしまう。それでも従前と変わらぬ愛を注ごうとする夫だったが、狐となった妻は内面までも野生化…

パフューム−ある人殺しの物語−(トム・ティクヴァ)

世界幻想文学大賞受賞作『香水』の映画化。堂々たる大作で、『ラン・ローラ・ラン』を見たときは面白かったけれど「またタランティーノ・フォロワーか」というイメージしかなかった監督だったので、そこが一番の驚きだった(『ヘヴン』は未見)。 まずもって…

アイ・アム・レジェンド(フランシス・ローレンス)

大風呂敷を広げた割りにはこぢんまりした印象でした。同じ内容なら低予算で『28日後・・・』がもっと上手いことやってたなぁという感もあり。※ネタバレ注 ただ、ショッカー演出に関しては(音響効果の進歩の恩恵もあってだと思うけれど)かなり巧かった。…

カードケース

入社時に買ったきりの名刺入れが10数年の時を経て大分痛んできたので、思い切って購入しました。エッティンガーのカードケース。色はシックにネイビーで。(色が白とか素材がパテントレザーみたいなトレンド寄りのものは旬が短そうなので。)でも内側の黄…

千の脚を持つ男―怪物ホラー傑作選(中村 融編)

表題作の『千の脚を持つ男』は海野十三あたりの南洋怪異譚を想起させる懐かしいテイストの作品(舞台はほとんど街中だけど)。なんでも作者のフランク・ベルナップ・ロングはクトゥルー同人(同人?)では有名な寄稿者だそうです。いわれてみるとなるほど。 …

幻想と怪奇2−宇宙怪獣現る−(仁賀克雄編)

不思議とこども絡みのネタが多い。ホラーアンソロジーの第2弾(復刊)。 こどもが主人公の幻想小説といえばレイ・ブラッドベリ。ごく幼い日の夢とも現ともつかない日常を描かせたら右に出るものはいない作家ですが、この短編集にも収録されています。『トラ…

コワイ女(雨宮慶太、鈴木卓爾、豊島圭介)

オムニバスなんだけど、とにかく『鋼』が突出してよかった。不条理としかいいようがない、つじつまの合わない話で、目が覚めてから全容を思い出そうとしても霞が掛かったように茫漠としてるんだけど、性的な要素だけは妙に生々しくて・・・という、つまり夢…

線引き

ユリイカ11月臨時増刊号は荒木飛呂彦特集だった。僕は『魔少年ビーティー』の頃からのファンだけど、よく知られるように、作者は作中で映画や小説からの引用というかオマージュ的な描写を登場させることが多い(ex.『激突』『極大射程』)。意地悪な言い方…

HAZE(塚本晋也)

塚本監督は「とりみだしながらも一生懸命なオッサン」を撮るときがやっぱり最高ですね。 とはいえ、結末があまりにも理に落ちすぎというか・・・そうでもしないと収拾がつかないような話ではあるのだけれど。なんか仏教説話みたいだったよ。 ☆☆☆

ゴッドファーザーPARTII(フランシス・F・コッポラ)

最近のTVのロードショーは近日公開の映画のプロモになってしまって、「押さえておきたい名画」的な作品はとんと放映しなくなったよなぁ、という感慨のもと、よく考えたら大人になってからこの映画をちゃんと観てなかったことに気付いて借りてきました。 作…

コベナント(レニー・ハーリン)

『花より男子』がハリウッドで映画化、しかも監督はレニー・ハーリンだって!? って書いたら導入としてはキャッチーかなと思ったけど、やっぱり無理があったかな・・・庶民派の女の子がハイソな学園でイケメン4人と仲良くなるという話だから間違いでもない…

【新釈】走れメロス他四篇(森見登美彦)[rakuten:book:12005528:image]

文字通り正真正銘の企画もの。作者のビブリオグラフィー的にも今のタイミングしかありえない。 名作の誉れ高いクラシックを森見流に再話。基本的にプロットは(本質的には)同様なんだけど、そこから提示される結末は全く別の解釈で・・・ということはなく、…

毛皮のエロス(スティーヴン・シャインバーグ)

変態的世界観を志向する映画作家として、まがりなりにもメジャーシーンで活動している監督の中では、デヴィッド・クローネンバーグとデヴィッド・リンチの「ふたりデヴィッド」が2大巨頭であるのは異論がないところでしょう。ただ個人的には、リンチには欧…

幻想と怪奇3−おれの夢の女−(仁賀克雄編)

収録作中では表題作のリチャード・マシスン「おれの夢の女」がいかにも彼らしいスパッとオチの決まった短篇らしい短篇で良かった。妻の予知能力を商売道具にしたろくでなしの末路は・・・とストーリーのさわりを書いただけでもうオチが分かってしまうような…

エロマンガ島の三人(長嶋有)

『サイドカーに犬』が入り口だったせいか、シビアな事柄を扱ってもほのぼのテイストを失わない作家だと思っていたけれど、意外と毒のある作品を書く人なんだなとますます感じ始めました。 というわけでお気楽なタイトルだけど、最初の印象とは真逆に、ほのぼ…

ロスト・イン・トランスレーション(ソフィア・コッポラ)

そうか、この曲があったな!ほとぼりがさめたら使おう、と寝かせておいた(と思しき)エバーグリーンな名曲がひょっこりCMに登場することって割とよくあるけれど、この映画で使われてたんですね。アサヒビールの「風をあつめて」。 さて、ネット感想文を散…

霧(フランク・ダラボン)

いよいよ米では11月21日公開だそうで。★究極映像研究所★経由で知りました。 ところでキングの作品に関しては、長編も確かに面白いしお腹一杯楽しませてくれるんだけど、個人的には行間を読む余地があったり、その後を想像させてくれる余韻のある短篇の方が好…

網だなの雑誌は今日発売

前回「一休さん」について書いていて思ったんだけど。 こういうエピソードがあります。「どちてぼうや」という、目にしたどんな物事に対しても「どちて?」と尋ねずにはいられない幼い子供がおりました。最初は何かと返事をしてあげていましたが、あまりの頻…

ボーン・アルティメイタム(ポール・グリーングラス)

物語自体は前作である程度きれいに決着がついていたので、多少むりくり作った感は否めなかったけれど、ポスト冷戦時代のスパイ映画としてはこれ以上望めない完成度の三部作だったと思います。(以降ネタバレあり。)主人公が個人的な理由から身内相手に戦う…

大尉のいのしし狩り(デイヴィッド・イーリイ)

『一休さん』のエピソード。日々の贅沢三昧に倦んだ足利義満が、例によって新右衛門さんに「このわしを満足させるような究極の料理を見つけてまいれ」と命じます。そしてこれまた例によって「助けてくだされ一休どの〜」と一休の知恵を拝借に安国寺へやって…

ホステル(イーライ・ロス)

相当ヤバイという噂だけを聞いて、ビビってなんとなく観てなかったのだけれど(友人の「いやぁあれは・・・ないなあ」という漠然とした感想もそれに拍車をかけてくれた)、見ない事で逆に僕の想像の中の『ホステル』がかなり非道いことになってきて、そのプ…

ベルカ、吠えないのか? (古川日出男)

各所で絶賛だったので期待して読んでみたら・・・期待値が高すぎたのかしらん。古川作品は初めてなのですが、ベタないい方をすると2000年代の村上龍という印象。 様々な犬の人生のクロニクル。あえて作品中のトーンを一定させないという方法論で、それぞ…

きつねのはなし(森見登美彦)

『太陽の塔』に顕著だった、夏目漱石(百輭)的の狂騒的筆致はこの作品では鳴りを潜めている。しっとりとした文章で綴られる怪奇幻想譚。「漱石先生のことなら私のほうがもっと好きなのに!」みたいな、女子高の生徒的なジェラシーのせいで客観的に読めてい…

エレクション−黒社会−(ジョニー・トゥ)

辛抱たまらんちんなタイトルですが、そうじゃなくて「選挙」の意味のほうですね。リース・ウィザースプーンが出てた方とはまるで方向性は違うけれど、どっちも「痛い」話ではありました。 香港で権勢を誇る有力組織で次期会長選挙が行われる。候補は人望が厚…

ゴーレム100(アルフレッド・ベスター)

途中、エンターテインメントの手練手管で盛り上げておいて、結末で哲学的な問いかけをお客さんに放り投げたまま「・・・ンン?」ってなっちゃう作品をエヴァ的とするならば、これはまたものすごくエヴァ的作品だったなあと。(もうそういう言い回し、僕自身…

ゆれる(西川美和)

劇中、「主人公であるオダギリ・ジョーのセックスシーンのクライマックス」→「ガソリンスタンドの給油」というシークエンスがあるんだけど、今時こんなつなぎ方するのか!と思った。というのも、中学校時代、深夜に親の動向を窺いながら息を殺して見ていた『…

プラダを着た悪魔(デビッド・フランケル)

彼氏役のエイドリアン・グレニアーが山田孝之に見えて仕方がなかった。 『マイ・フェア・レディ』『プリティ・ウーマン』の系譜に連なる、外見が洗練されるとともに本人自身が磨き上げられるという話。外見の洗練=内面の向上という話は男が主人公の作品では…

「21世紀を夢見た日々〜日本SFの50年〜」

10月21日(日)にNHKで放送されるETV特集のティーザーが先ほどありました。小山薫堂の呼びかけに不完全なアンドロイド的佇まいの栗山千明が答える、といったつくり。つまり全体として『ボッコちゃん』をイメージしてる。なかなか気が利いてるな、と思…

虐殺器官(伊藤計劃)

作者のブログに頻出する要素を見ていると、展開や結末はある程度予想される物語ではある。特に『セブン』でいうジョン・ドゥ的な在り方(それよりもっとそのものズバリの映画もあるけれど・・・)に対する憧憬などは、(ネットで批判が散見されるけれど、個…

キングダム−見えざる敵(ピーター・バーグ)

『ブラック・レイン−サウジ編−』みたいな映画だったすね。 「9.11以降に自覚的な作品」「ハリウッドのメジャー作品にしてはバランスの取れた世界観」、みたいな決まり文句が9.11以降に作られた(特にアクション)映画ではそれこそうんざりするほど繰…