2012-01-01から1年間の記事一覧

ホビット 思いがけない冒険(ピーター・ジャクソン)

今更あえて申し上げるならば、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズはエピソードの消化に追われて些か駆け足すぎて、映画として見た場合には平板な印象が最後まで拭えませんでした。(かつて思い描いていた絵をディテールを怠ることなく映像化してくれた、…

ミッドナイト・イン・パリ(ウディ・アレン)

ジャズエイジいいわー、ロストジェネレーションいいわー、もちろんパリ好きだーって言ってるだけの映画なのに、これが監督史上最高の稼ぎを上げた作品とは・・・いいのかしら?いやこういう話だからこそなんでしょうね。 という風にちょっと乗り切れない印象…

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(庵野秀明(総監督))

やりたいことは旧劇場版でやり尽くしたんだから、今回こそは王道エンターテインメントできっちりすっきり決着を付けてくれると思ったんだけど、そう上手くはいかなかったか。しかしじゃあなんでまたやり直したの?と観客の立場としては言いたいね。ミサトさ…

ダイナミックフィギュア(三島浩司)

異星人の侵略を境にして決定的にその様相を変えた世界情勢。日本いや地球の命運は巨大人型兵器を駆る3人の若者たちに託された!という筋書きこそエヴァを思わせるものですが、作品のメンタリティは押井守風(映画版パトレイバーとかケルベロスシリーズとか…

裏切りのサーカス(トーマス・アルフレッドソン)

せっかく一流の食材を揃えながら、いざ出来上がったものは「どうしてこんなことに?映画ってやっぱり難しいね…」という悲劇をこれまで我々は何度も目にしてきた訳ですが、その点、準備された一級の素材を期待されうる最高の料理として供してくれたトーマス・…

上出長右衛門窯 × ハイメ・アジョン:FORMA

金沢に旅行へ行ったので、ちょっと前に話題になっていたハイメ・アジョンと九谷焼窯元の上出長右衛門窯とのコラボレーション企画の器を買いに行きました。どういうところで作られてるんだろう?という興味ありきでの探訪だったのですが、昔ながらの磁器工場…

リンカーン/秘密の書(ティムール・ベクマンベトフ)

リンカーンは実はヴァンパイア・ハンターでもあったのでした!という出オチ企画なのでそもそも物語には期待してなかったのだけど、それにしてもベクマンベトフ作品にしては存外薄味。 ・いくつかのシーンは先日読んだ『フィーヴァードリーム』まんまの画で、…

ファミリー・ツリー(アレクサンダー・ペイン)

大仰な話運びではないのに、そして劇的なことは何も起こらないのに、不思議と惹きつけられるのがこの監督のストーリーテリングの素晴らしさですね。映画の展開のために「配置した」と感じられるエピソードがない自然な語り口。有機的な構成とドライブ。 当人…

フィーヴァードリーム(ジョージ・R・R・マーティン)

南北戦争前夜のアメリカ。自然災害で船を失ったマーシュは未だその失意の底にあった。ある夜、そんな彼を一人の男が訪れこう申し出る、「金に糸目を付けず資金提供をするので、蒸気船を建造し共同経営者として共に船旅をしたい」と。かねてからの野望を形に…

ボーン・レガシー(トニー・ギルロイ)

いやー・・・これはあかんやろ・・・という感じでした。こんなんじゃ劇場を出ても「背筋を伸ばして早歩き」になる観客はいないぜ。せっかく美しく完結した物語をあとから濁すようなことにならねばよいが、という不安的中。以下簡単にメモ。 ・3作目ですら些…

失脚/巫女の死(フリードリヒ・デュレンマット)

実に舞台的な道具立て筋書。作者は劇作家としても著名とのことなのでなるほど納得だったのですが。合計4作品収録の短編集で、個人的にはやはり表題作の2本が好みでした。 ・「巫女の死」ソフォクレス作の悲劇で知られる「オイディプス王」のエピソードを、…

るろうに剣心(大友啓史)

まさしく世間一般で言われている(印象として)のと同じ感想を持ちました。曰く「アクションは頑張っているけど、ドラマが…」。 ・確かにアクションは近年の邦画としてはかなり上手くいっていた印象。とくに外印(綾野剛)との近接戦闘は『アジョシ』に比肩…

アベンジャーズ(ジョス・ウェドン)

まさしく王道のヒーロー映画!まずは監督の手際の良さを賞賛したい。例えるなら『ダイハード』みたいな、展開のスムーズさとテンポの良さそのものが観客のご馳走といった性格の作品ですね。無駄のない筋運び、しかし駆け足ダイジェストといった印象はなくて…

トータル・リコール(レン・ワイズマン)

やはり『ブレードランナー』で提示された未来都市のインパクトを更新するのは無理なのか・・・この作品では最初から刷新へのチャレンジなど諦めて、最新技術による洗練の方向で勝負していたのはむしろ潔くて良かったのかもしれません。猥雑なアジアンテイス…

プロメテウス(リドリー・スコット)

『星を継ぐもの』暗黒編という感じの話でしたね(まあ元々そういう話ではあるのだけど)。「プロメテウス」という思わせぶりなタイトルが、作品の象徴として上手く機能していないのが如何なものかとも思うのですが・・・エイリアンシリーズをほぼリアルタイ…

デビル(ジョン・エリック・ドゥードル)

80分という潔い尺が良い。シャマランの若手発掘企画ということですが、画作りも役者の雰囲気もリッチで、バジェット以上の格を感じさせる仕上がりになっていたように思います。※ 変にプロットをひねり過ぎることなく、不穏なトーンと緊迫感で一気に結末ま…

ダークナイト ライジング(クリストファー・ノーラン)

見事に完結させていたと思います。以下、感想メモ。(ネタバレありなので未見の方はご覧にならないでください。) ・噂されていた以上に『パトレイバー2』色が強かった。テロリスト集団と地下に潜った国家組織の暗闘という構図もそうだけど、橋を落としてゴ…

グスコーブドリの伝記(杉井ギサブロー)

ううむ・・・『銀河鉄道の夜』再び、という夢を見た僕がいけなかったのでしょうけれども。結末含め「む?」となることが多かったのも事実。危惧していた声優陣(小栗旬など)はむしろ健闘していて※1、やっぱり脚本の問題が大きかったか。加えて、あれこれあ…

ドライブ(ジェイムズ・サリス)

映画『ドライヴ』の原作。映画では愛する女性の生活を守るため、無謀な戦いに身を投じていくという大枠の物語があって、個人的にはそのロマンティシズム故にグッときたのだけど、こちらの小説は裏社会に生きる青年の成長譚としての側面が強い。定義そのもの…

アメイジング・スパイダーマン(マーク・ウェブ)

僕のスパイダーマン原体験は御多分に洩れず東映特撮の「スパイダーマン」なんだけど、程なくして、アメコミの伝道師である小野耕世編訳の「よりぬきスパイダーマン」的な(有名ヴィランの登場エピソードを日本のいわゆるコミックスのフォーマットでまとめた…

密告・者(ダンテ・ラム)

潜入捜査ものというのはアクションよりも登場人物の葛藤のドラマに重きが置かれるものですが(と書いた瞬間『ワイルド・スピード』を思い出してしまった。まあそれはそれとして…)、例えば『インファナル・アフェア』がサスペンス醸成のため、あえて作り物め…

セレニティー(ジョス・ウェドン)

低予算の限界が端々に見られつつも、その心意気で傑作足りえている映画というのが大好物なもので(『ピッチブラック』とか)、この作品もお気に入りになりました。 冒頭のケレン味あふれるマトリョーシカ構造も導入としてはなかなか見せる。クンフー使いの戦…

キャンバス(サンティアーゴ ・パハーレス)

作者の既訳の『螺旋』は、本の作者を巡る聖杯探究譚のような趣の物語でありながら、ジャンキー青年の社会復帰へのサバイバルが挿入されたり、夫婦のありようの難しさが語られたりと、どこへ連れて行かれるのか見当がつかないエピソードのカラフルさが魅力の…

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(バンクシー)

ガチなドキュメンタリーかと思ったら手の込んだフェイクだったんですね(だって、枠物語たるMBWの顛末を最初からカメラが追ってるし)。 それはさておき、登場する(インベーダーのような)ストリートのポップカルチャーヒーローを見ていると、リアルタイ…

エリート・スクワッド/ブラジル特殊部隊BOPE(ジョゼ・パジーリャ)

さてさっそく続編を観てみました。改めて思ったけれど、このシリーズは諦観滲む主人公のモノローグが素晴らしい。やせ我慢と強大な権力に対する無茶な戦いという点でハードボイルドの美学に通じるものがあるから、この語りのスタイルも意図されたものなんで…

サトリ(ドン・ウィンズロウ)

トレヴェニアン『シブミ』のプリクウェル的な、という位置づけなんだけれど、やはりあのトレヴェニアン節というか、屈折、屈託、迂遠な韜晦趣味というのは全くなくて、どちらかというとむしろラドラムのような出たとこ勝負の勢い任せな話になっていた。しか…

ラブ・アゲイン(グレン・フィカーラ、ジョン・レクア)

話題の作品だったので気になってはいたのですが、ようやく見ることができました。とにかく脚本がよくできていることに感心することしきり。個人的には、(例えば『ダイ・ハード』のように)狙って達成できたという以上に映画の女神の思し召しで奇跡的にもの…

エリート・スクワッド(ジョゼ・パジーリャ)

各所で話題になっていましたが、なるほどベルリン金熊ウィナーというのも納得の傑作でした。 ブラジルのファベーラを舞台にしたドキュメンタリータッチのルックと語り、という点ですぐに想起されるのはやはり『シティ・オブ・ゴッド』ですが、脚本が同じ人だ…

MIB3(バリー・ソネンフェルド)

もともと移民を宇宙人になぞらえて、かつ都市伝説のパロディ風味のブラックコメディとして作られた本シリーズ。個人的にはしょーもないギャグをコンボで叩き込んでくることで脱力気味に笑わされてしまった2作目が結構好きだったので、3作目はどうなってる…

DATSUGOKU 〜脱獄〜(ルパート・ワイアット)

タイトルだけ見たら、一山いくらで買い付けてきた最近のセガール映画みたいだけど、『猿の惑星 創世記』の監督の出世作ということで観てみました(原題:The Escapist)。『創世記』は思わぬ傑作で、映画とはまずもって画で語るメディアだ、ということを改め…