2023-01-01から1年間の記事一覧

パーム・スプリングス(マックス・バーバコウ)

ちょっと前でいうジャド・アパトー関連の、少し下世話な、それでいてちょっとホロリとさせる人情コメディの線を狙ったタイムループものなのかな。 なんですが、物語の骨格はほぼ同じといってもいい『明日への地図を探して』の方がより好みでした。先に見た方…

言葉人形(ジェフリー・フォード)

読書ずれして、だいたいの有名な作家や作品は把握しているつもりだったけど、不明を恥じるというか、まだこんな作家がいたなんて!という嬉しい驚きでした。どちらかというと国書刊行会的なラインの作家だと思うし、本の体裁もそれ風なんだけど、東京創元社…

ザ・ライト -エクソシストの真実-(ミカエル・ハフストローム)

申し訳ないですが、何かを信じすぎることはよくないなと思いました。 ☆☆☆

山善電気ケトルEGL-C1281

コーヒー道界隈で話題になっていたのを横目に見ていたのだけど、山善の電気ケトルをついに買ってしまいました。1℃単位で温度調節ができて、かつその温度でキープも可。コーヒーを淹れる際、定番の80℃がちょうどいい豆(個人的にはグアテマラなど)もあれば低…

スピリットウォーカー(ユン・ジェグン)

記憶が失われ、かつ他人の体に魂が乗り移る男の孤独な闘い、という導入が面白かったのだけど、だんだんネタが割れてからは普通になったかな。とはいえ、「乗り移った身体とは関係なく、本人の身に付いたスキルが勝負を分ける」という設定と展開は結構盛り上…

V.I.P. 修羅の獣たち(パク・フンジョン)

ちょっと前の映画だけど、韓国の暴力描写のエクストリーム化路線に懸念していたことが的中していたなと思いました。「ためにする残酷描写」がひどすぎて僕にはアウトだった。フィクションなんだからそこは作り手次第な訳で、物語の要請上もあそこまでする必…

コンティニュー(ジョー・カーナハン)

端的にいって『オール・ユー・ニード・イズ・キル』なんだけど、そもそもカーナハン監督って、過去をやり直すとか過去を取り戻すといった物語へのオブセッションがすごいなと思う。『NARC ナーク』から此の方その話しかしてないくらいの印象があります。 と…

帝都物語(実相寺昭雄)

角川文庫版で当時最後まで読みましたが、幻魔大戦とか宇宙皇子とか流行っていたような記憶と一緒になっています。そうそう確かにそういう話だったなと思い出しながら見ていたけど、一見さんにはなにがなんだかという作り。正直、作品としても長いわりにほど…

オペレーション・フォーチュン(ガイ・リッチー)

いい湯加減の娯楽作品で、贅沢なキャストの割りにアクションは実は控えめだから意外と予算はほどほどだったのかも。僕はガイ・リッチーのリッチ描写が好きなのでその点は楽しめました。ブラックコメディなのかシリアスなのか、みたいな案配は『スナッチ』に…

ブラック・レイン(リドリー・スコット)

公開時に観て、以降、高校生から大学生にかけて何度もダビングしたビデオを見返したけど、正直、ジャスト水準作だとは思います。松田優作のシーンを真似するほど好きだったのだけど。 あと、ブレードランナーの実質セルフリメイクですよね。異文化との衝突と…

ゾディアック(デヴィッド・フィンチャー)

公開時に観たきりだったけど、久しぶりに見返してみました。当時は長いな…という印象で、グレイスミスが事件にはまりすぎて憔悴するあたりからもういいんじゃないかなという気分になりました。 今回は、意外とブラックコメディ的な呼吸で演出されていること…

羆嵐(吉村昭)

何かと熊の出没が話題になっている今だからということで読みました。凄絶というかすごかったです。銀四郎の猟師としてのプロフェッショナリズムと一瞬で勝負が付くあっけなさがかえってリアルだなと感じさせて印象的でした。あと組織というものが持つ本質的…

MASTER/マスター(チョ・ウィソク)

全体としては虚々実々の警察と詐欺師の駆け引きのサスペンスなんだけど、要所でディテールが大味かなという描写もありました。総じて面白かったのだけど、『毒戦BELIEVER』というかオリジナルの『毒戦』でも印象的だった(というか「毒戦」という作品の要と…

バーバリアン(ザック・クレッガー)

予測を裏切るホラーだったですね。序盤の演出が絶妙だったから、ネタが割れてからは消化試合になってしまうのは仕方ないか…それにしてもジャスティン・ロングは得しない役をよく受けたなと思いました。 あと『悪魔の沼』のホテルと同じ意味合いで、そこに泊…

ノマドランド(クロエ・ジャオ)

正直こういうジャンルの映画を見ると、どういう気持ちになればよいのか…と途方に暮れる。まさにそれが狙いだとしたら正解なのかもしれないのだけど。それと映画館でやっぱり観るべき映画というのがあって、この作品もまさにそうだった気がします。そういう映…

非常宣言(ハン・ジェリム)

航空パニックものと刑事もの、そしてポリティカルサスペンス的な要素をトッピングしました、という作品。正直個々の要素は定番をなぞるだけで新鮮味はなかったし、テロ実行犯の動機も「動機のための動機」みたいで説得力がなかった(そうでないと物語が始ま…

拳銃残酷物語(古川卓巳)

競馬場からの現金輸送車を襲撃する、という発端こそ『現金に身体を張れ』なんだけど、裏切り裏切られ、死体の山が次々と築かれるところはテンポのよさもあってなかなか切れのあるノワールでした。 仕事を組むに値する人間なのか試すところなんかはプロフェッ…

危いことなら銭になる(中平康)

都筑道夫が原作シリーズという設定で見てみました。中平監督といえばまずは『狂った果実』ということになるかもしれませんが、結構こういうジャンルも手掛けています。主題歌作詞が谷川俊太郎というのも面白い※。 作品そのものはお気楽な犯罪コメディ。クレ…

スクリーム(2022)(マット・ベティネッリ=オルピン、タイラー・ジレット)

4が製作されていることすら知らなかったのですが、スクリームシリーズは好きだったので順番でいえば5にあたる(そして直接の続編である)今作も気になって見てみました。 過剰に自己ジャンル言及的なつくりで話題を集めたシリーズだけに、今回もその構造は…

俺にさわると危ないぜ(長谷部安春)

タイトルバックであからさまにモーリス・ビンダーというか007を真似しているのだけど、あまりの貧乏くささに「ウワッダサい」と思わず声が出てしまいました。 かように全体としてなんちゃって007なんだけど、監督が鈴木清順組出身だったからなのか、清順タッ…

夏の葬列(山川方夫)

一般的には表題作「夏の葬列」が教科書に採用されていて、そこで初めて出会ったという方が多いようですね。ショートショートの作家としてだったのか、あるいは一時期小林信彦の著作を集中して読んでいたのでその文脈でだったのか、名前だけは目にしたことが…

劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇、螺巌篇(今石洋之)

(ネタバレかもしれません。)ようやく見ました。すみません、TVシリーズは長かったので映画版です。所謂劇団新感線イズムというか中島かずき節をやるならロボットアニメがいいのでは?もともとのインスパイア元だし、という企画だったと思うのですが、その…

トラブルシューター解決士(クォン・ヒョクチュ)

あれよあれよという間にトラブルがどんどん大きくなっていくタイプの巻き込まれ型サスペンス。 ただ気になる点として、弁護士は刑事と民事どちらもやる人はいないのでは?いやそんな些末なことよりも物事が明るみになるリスクが大きくなるくらいなら最初から…

グリッドマンユニバース(雨宮哲)

あまりにもセカイ系がすぎるだろうとやはり思いました。いつの世代もそういう需要が一定あるということなのかな(この前も書いた気がしますが)。恋愛がすべてであるような青春描写も抽象的空想的すぎて飲み込めなかった(地に足がついていない頭で書いたド…

カモン カモン(マイク・ミルズ)

丁寧かつ誠実に作られた作品だと思うのだけど、やはりA24製作の映画とは合わないのかな。なんだかどれも同じ匂いがする。「生活に問題を抱えている」けれども居心地のよさそうな調度、とか、こざっぱりしたインタビュイー、物語に集中してほしい故にノイズと…

進撃の巨人アニメ版の完結

(ネタバレします。)アニメが最終回を迎えました。アニメから入ったので、またアニメとしてのアダプテーションがあまりにも素晴らしかったので※1、あえて原作時点では最終回を読んでいませんでした。原作の最後について「手放しで絶賛という訳にはいかない…

犯罪都市 THE ROUNDUP(イ・サンヨン)

常軌を逸した犯罪者を常識外れの刑事が叩きのめす、というシンプルな話。ストレートな捕物帳で娯楽作品としては十分満足でした。しかしながら、1作目の組織同士の抗争と市井の人々のようなレイヤーの異なる人間ドラマの妙味には乏しくて、すこし残念だった…

神々の歩法(宮澤伊織)

端的に言えばウルトラマンのバリアントですが、ミリタリーSFと融合することで意外な面白みを獲得しています。宇宙の超次元から襲来した知性体同士の戦いのため、現実世界に物理的な力を行使するには次元を超えた舞踏を展開する必要がある、という設定が美し…

スパイ・ゲーム(トニー・スコット)

最近の若い人にはもはやピンとこないかもしれませんが、『リバー・ランズ・スルー・イット』あたりからロバート・レッドフォードの再来と呼ばれるに至ったブラッド・ピットが、いよいよ満を持して「ご本人登場!」となった、という出オチ企画感が当時ありま…

すばらしき映画音楽たち(マット・シュレイダー)

映画の草創期から現代に至るまで、映画音楽がいかにして発展を遂げてきたかをコンパクトに過不足なくまとめていて素晴らしかったです。 個人的には、パソコン上で作成された楽曲をオーケストラ用の譜面に起こすオーケストレーターを始めとして、必要な見出し…