ノマドランド(クロエ・ジャオ)

 正直こういうジャンルの映画を見ると、どういう気持ちになればよいのか…と途方に暮れる。まさにそれが狙いだとしたら正解なのかもしれないのだけど。それと映画館でやっぱり観るべき映画というのがあって、この作品もまさにそうだった気がします。そういう映画は全然鑑賞後の印象が違うから。

 あと補足情報として、デヴィッド・ストラザーンの息子役は本当に息子さんだったとのことで、知ると知らないとではあのシーンの雰囲気の受け取り方が変わるから(個人的には)、知れてよかった。青年期にはどうしても父親を受け入れ難かったけど、今はまあ理解できなくもない、みたいな感じですね。まさか孫までリアル孫じゃないよな…

 ともあれ、率直な感想としては、いかに困窮しているとはいえ腰を落ち着けて暮らすことが可能なら(少なくとも主人公はそうな訳で。しかしデイヴと共に生きていくことはできないのか?という意味ではありませんが)、そちらを選ぶべきじゃないかと思ってしまうので、共感には至らなかった。やっぱり理解はできない。そういう生き方もあるんですね、というに留まりました。雄大な景色を見せられても、死と隣り合わせではなあ…という気分になる。

 ここからは全く余談ですが、監督の大好きな漫画は『幽☆遊☆白書』というのは『エターナルズ』以来知られたところですが、この作品のような世界観とまったくアンバランスだから、自身の中でどのような折り合いをつけているのか不思議だったのです。あるいは「現在の社会情勢に物申す知識人」としてこの作品を描いているのであって※、心理的な距離感は遠いのかなと思いました。こんな自由な生き方もあるのかもしれないと心底は思っていないように感じられた、というか。

☆☆☆

※もともとフランシス・マクドーマンドの企画であって、監督としては雇われ仕事なんですよね。