非常宣言(ハン・ジェリム)

 航空パニックものと刑事もの、そしてポリティカルサスペンス的な要素をトッピングしました、という作品。正直個々の要素は定番をなぞるだけで新鮮味はなかったし、テロ実行犯の動機も「動機のための動機」みたいで説得力がなかった(そうでないと物語が始まらないから、でしかないと思った)。一番致命的なのは、「非常宣言」を宣言した際に、そうでなかった場合とどのような影響の差があるのか伝わってこなかったことだと思います。一方、飛行機があわや墜落か、という描写はやはり映画館で観るべき作品であったと思いました。

 それはさておき、上記の要素は思考実験の前提であって、実はこの作品においては些末なことにすぎない、ということだったのではないでしょうか。この作品の意義は、韓国における近年のトラウマである「セウォル号事件」や、もちろんコロナ禍における分断などを踏まえて、「人はいかにあるべきか?」という問いを立てる試みだったように感じられました。それを踏まえるならば、結末の苦さは作り手の真摯さの表れだったように思います。

☆☆☆1/2