タクシー運転手(チャン・フン)

 韓国映画に力作が多い現代史もの。今作も素晴らしかったです。『義兄弟』の監督だったんですね。再びのタッグのソン・ガンホはいつもどおりの好演。ユ・ヘジンも本当にこういう市井の人の演技がすごくいいですよね。というか役者陣はみなよかった。

 主人公の設定は事実とかなり異なるようですが、人物造形がこの映画の「語り手」として実に巧みで、登場人物たちの社会的な立場が微妙に異なる在り様がこの物語を立体的にしていると感じました。

 あえて難点を書くとするなら、タクシーのチェイスが本来作品が要請する以上に盛りすぎだったなということと(単なる脱出行でも十分スリリングだった)、過酷な現場を重ねてきたはずのジャーナリストにしてはヒンツペーターがナイーブすぎること。もうちょっと役者の力と観客の咀嚼力を信じてもよかったのではと思いました。でも娘のための靴を買うくだりには涙が止まりませんでした。

☆☆☆☆