進撃の巨人アニメ版の完結

 (ネタバレします。)アニメが最終回を迎えました。アニメから入ったので、またアニメとしてのアダプテーションがあまりにも素晴らしかったので※1、あえて原作時点では最終回を読んでいませんでした。原作の最後について「手放しで絶賛という訳にはいかない」という評判を耳にしていたので少し構えて臨んだのですが、概ねこうなるしかないという納得の結末だったと思います。(確かに今までの進撃から期待されるようなレベルの驚きの展開はなかったかもしれませんが、丁寧に幕引きをしたという印象ですね。)

 もともと母親の復讐を誓った少年がその衝動の赴くままに戦い、目的の完遂と自由の獲得が通常の物語であれば結末となるところ、話はそんな単純なものではなかった、という大きな転換がこの作品の大きな見どころでしたが、主人公のエレンが「自身が人類の趨勢を委ねられた存在である」ということを理解した後(ということも、視聴者は随分あとに知らされた訳ですが、情報提示のタイミングの的確さよ!…)、物語の視点が彼の主観から三人称的「つまるところエレンは何を目的としているのか?」にシフトするところが実に見事でした。

 一方、物語の構造としても単なるマクロ的な叙事に留まらず、個々の登場人物が織りなすミクロの物語(生死を共にする戦い、恋愛、自らの生い立ちと結びついた信念からの行動)と有機的に結びついて巧みでした。あまりに凄惨な成り行きに、他の道はなかったのか?とこれまでのエピソードを顧みても、やはりこの結末しかなかったのだと深く納得させられます。個人的にはジークの顛末には(というかイェーガー家の運命かな)、もっと救いが欲しかったと思いましたが。

 アニメでは最後のクレジットで、巨人の力が失われたとしてもその後の人類はやはり同じ過ちを繰り返すのだ、ということが描かれていましたが、正直蛇足であると思いました。そこさえなければ…とは思うものの、登場人物たちの迎える結末が「大団円」である故に、これだけ現実の世界が問題を抱えているのに、アニメを見ただけで何かが解決したような、そんな安易なカタルシスを得てほしくない、という作り手側の誠実さだったのかもしれません※2。

 ともあれ10年間ありがとうございました。

☆☆☆☆☆

 ※1 ところで林監督はもちろんのこと、小林靖子とそこから引き継いだ瀬古浩司の脚色は神がかった達成だと思います。瀬古さんの仕事は「呪術廻戦」も素晴らしいですね。

 ※2 文字通り世界に影響があるような作品に成長したのだから本当にすごいですよね。最後のクレジットのあの部分はコミックスでの補足部分だったんですね。