ミステリとしての強度はそこそこなのだけど、物語のディテールが妙に明確で生々しく記憶に残ってしまう。(時々、物語の全容はぼんやりと忘れてしまっているのに、ある個所だけやけに詳しく覚えていて、「あれって何ていう作品だったっけ…」となることがありますが、収録されている作品全てが後日そんな感じになるのではという予感があるくらい。)
もうひとつは登場人物の造形が物語の要請する以上に(本当だったらカキワリ的でいいくらいなのに)奇矯であること。猫狂いの自称神父とか、胸にノーズアート的なタトゥーを施した小説家志望の青年、耳が聞こえない半裸の劇作家…
つまり「知る人ぞ知る小説を発掘する」叢書というコンセプトは、名作と断言するのはちょっと憚られるが、突出した個性がある作品ということなんですね。そういう話を愛でられる方にはお薦めかな…
☆☆☆1/2