ベルカ、吠えないのか? (古川日出男)

 各所で絶賛だったので期待して読んでみたら・・・期待値が高すぎたのかしらん。古川作品は初めてなのですが、ベタないい方をすると2000年代の村上龍という印象。
 様々な犬の人生のクロニクル。あえて作品中のトーンを一定させないという方法論で、それぞれの犬の生き様をバリエーション豊富に描き出すという戦略をとっている。そのひとつとして、例えば「共産圏の科学技術って、本当に進んでるなあ。いやはや、まいったなあ、とは思わない? どうよケネディ君?」みたいな小説らしからぬ「雑な会話文」も出てくる。でも個人的には、(こういうタイプの作品だと致命的だと思うんだけど)そういうのが全く格好良いと思えなくて。この前の「文藝」の特集みたいに「書きながら斃れたら本望」みたいな、あるいは向井秀徳と朗読ギグとか、作者が前面に出てくる感じというのはなんか格好悪いなあ・・・っていう気持ちが、読む上でバイアスになってたかもしれないけれど。
☆☆☆1/2