シン・マシン(坂本康宏)

脳の一部が機械化してしまう奇病が蔓延し、罹患者が外部の機器を利用せずにネットワーク化された社会。奇病に対する免疫があった者は、そのネットワークからはじき出され、疎外されていた。免疫者=スタンドアロンである主人公の青年はその日暮らしを余儀なくされていたが、ある日「ある女性を監視する」という仕事を請け負う。それがトラブルの始まりだった・・・

サイバーパンク的な世界観の下、典型的な(もはやジャンプ的と言い切ってもいいような)ヒーロー活劇が展開される。物語自体はスピード感があって悪くはないのだが、頻出する2ちゃん系のネット用語の流用による造語や、語り口にそれこそジャンプ的な子供っぽさを感じてしまう。好意的に受け止めれば、結末の展開への布石といえなくもないが。ストーリーテリングの技術については前作の「歩兵型戦闘車両ダブルオー」を読むまで保留したい。

個人的には結末部分での主人公のハリウッドチックな「大演説」が泣けた。ベタだと思っても、浪花節には弱いなあ。ただバーベキューの串のくだりは明らかに蛇足で、そこがもったいない。