見る前は、ハードコアでハードゴアな最近の韓国映画のトレンドに則った話なのかと思っていたのですが、そういう一点突破的な方法を採らずに、一見地味で丁寧な描写を積み重ねていきます。
まず(繊細なようで結構無神経な)主人公を初めとした全ての登場人物が、安易な共感を許さない多面的なパーソナリティで造型されています。さらにその一方で、例えば「口さがない閉じられた地方都市コミュニティの息苦しさ」みたいな描写を突き詰めていけば、主人公が精神的に追い込まれる説得要素として語り手としては楽だったと思うのですが、よくある作品のようにそれを一方的に断罪するのではなく、逸れてしまったものを受け止めてくれるのもまた共同体である(結末近くのささやかなエピソードに個人的には救われました。タイミングといい実に的確な伏線の回収)、という演出の清濁併せ呑む懐の深さが素晴らしかったと思います。
ただ、「感情移入を拒む人物を、全てを相対化する視線で描く作品」であるからして(しかも2時間20分の長尺)付いて行くのは正直しんどかったですね・・・ソン・ガンホの存在感で辛うじて見通せた感じでした。
☆☆☆1/2