「不死者の群れ」を観てまいりました。監督については『ザ・セル』が余りにもあからさまな現代美術の剽窃だったので、さすがにそれは如何なものか?と思っていたのだけど、『落下の王国』については、海外に撮影に出かける度にちょこちょこ撮りためたという実際の奇景にこだわった画作りと少女の健気さに、「べ、別に認めたわけじゃないんだからね!」程度には見直したのでした。さて今作は?・・・
・テセウスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。ってなるのも当然の邪知暴虐ぶり。ミッキー・ロークが。素晴らしき邪知暴虐のビジュアル化。『アイアンマン2』の100倍必然性のあるキャスティングだと思いました。
・キャスティングでいうと、主人公の相棒がお久しぶりのスティーヴン・ドーフ。これまたなかなかの好配役、と書いた傍から何ですが、イーサン・ホークやポール・ウォーカーと差し替えられても気づかなかった可能性大。
・プロダクションデザインが素晴らしい。メテオラとか投入堂みたいな「信じがたいところにある建築物」が大好きなので、たとえCGであってもグッときてしまいました。(タイタンを封印している画も気持ち悪くて最高だったけどね。)
・主人公テセウスが決戦を前にして「敵の血で歴史に名を記そうぞ!」と檄を飛ばすのだけど(物語的にも最高に盛り上がるシーン)、突然そこだけセリフが古文調になるのが面白かった。日本語だとなるほどそういうのが気分出るよな!と思うのですが、ああいう「ならではの表現」って英語でもあるのかな?
・ゼウスを初めとした神々が、まるで一流メゾンのファッション写真みたいに「おくびが出るほど過剰に美しいもの」として撮られてるのが思わず笑ってしまった。(「思わず笑ってしまうほどの過剰さ」というのはこの作品のキーワードかもしれない。)
・アクションについてはかなりゲームからの影響も大きいですね。特に「デビルメイクライ」とその影響下にある「ゴッド・オブ・ウォー」からは武器の表現なんかもほとんど直接的ないただきというか・・・テセウス無双だし、神様なんかもっと無双な感じだったけど。それにしても敵に倍するスピードでバッタバッタとなぎ倒す表現はとても爽快だったなあ・・・と考えてたら、009を実写化したらいいのに!というか元ネタの『虎よ、虎よ!』を映画化したらいいのに !と妄想が広がりました。
・人間のことには干渉しないというのがゼウスの文字通りのポリシーなんだけど、どのみち自らに影響が及ぼされる上、碌なことにならないのが分かってるんだったらさっさと止めればいいのになあ、とマッチポンプ感が拭えず。アレスが不憫やで・・・と製作者も思ったのかアテナから苦し紛れのエクスキューズがあるけど、やっぱり苦しいよ。
・タイトルは先ずは神々を指して「不死者たち」ということだと思うけれど、死してなお名を残すという趣旨で「不滅の」という意味が掛かってるんですね。
正直、「神々の戦い」というサブタイトルは若干看板に偽りありなんだけど、いい意味でミスリードされたので全くもってOKでした。いやー予想以上に面白かったです。フリーダ・ピントは「期待してなかったら意外や傑作だった映画」2連ちゃんヒロインでした。
☆☆☆☆
※実は高波のシーンが作品中一番好きでした。あそこはびっくりした。