2021-01-01から1年間の記事一覧

掃除婦のための手引き書(ルシア・ベルリン)

リディア・デイヴィスが「声」という形で表現面で高く評価しているから、原語で読んでこその作品なのかな、とも思ったのだけど。 私小説的な側面がある作品なので、それでいうとブコウスキーみたいにぶっ飛んだ感じまでいかないと引かれないというか。同じ翻…

クレイジー・リッチ!(ジョン・M・チュウ)

信じられないくらいリッチなセレブリティを画として見せ切ったのが素直にすごいと思いました。アジアロケなら相対的に安くできるであろう、今ならアジア人観客をターゲットにすればリクープは間違いない、だからこういう(筋だけでいえばシンプルで古典的な…

パンとバスと2度目のハツコイ(今泉力哉)

『愛がなんだ』が大ヒットしたのは、物語にフックがあったからというか全方位的にフックしかないというか、人口に膾炙してむべなるかなという感じだったのだけど、今作はもっと繊細な人間関係のあわいを描いていて、個人的にはもっと好きでした。(どちらの…

クワイエット・プレイス(ジョン・クラシンスキー)

低予算ホラーとはいえ、『イット・フォローズ』みたいな「映画の新しい地平を切り開くぜ!」といった趣の作品ではないので、そういった方向の期待をしなければ手堅く作られた映画として楽しめるかも。(ただ音が重要な要素である作品なので、やはり映画館で…

コッホ先生と僕らの革命(セバスチャン・グロブラー)

イギリス帰りのコッホは英語教師としてドイツの母校に赴任した。彼は授業の一環としてサッカーを取り入れるが、その型破りなあり方に、規律・服従を重んじる「校友会」や旧来の価値観を至上とする教師からは反発される… びっくりするくらい構成が良い意味で…

クリムゾン・ピーク(ギレルモ・デル・トロ)

デル・トロ監督は、やっぱり細部の作りこみはすごいけど、カメラに写っている外の広がりが感じられないよね…一貫してそうなのは才能だと思うけれど。個人的にはアメリカのパートの方が面白かったです。 ☆☆☆

三秒間の死角(アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム)

最初から超法規的措置で警察がバックアップすれば済む話(「その件は例のやつなので、スルーで」みたいに。それぐらいの覚悟決めてるんじゃないの?そもそも社会全体の利益を鑑みて、公共に資すると考えてるからこそ実行してるんでしょ?)と思うので、抜き…

アサインメント(クリスチャン・デュゲイ)

昔見たきりだったけど、アマゾンに入ったので久しぶりに見ました。内容全然忘れてたけど、確か面白かったよな、という記憶だけはあったので。結論を言えばやはりなかなか面白かった。どこまでも下世話なのは時代ということでご愛敬か。ボーンシリーズの前哨…

ボーダー 二つの世界(アリ・アッバシ)

何とも言えない余韻を残す映画で、こういう作品は好きなんだけど、正直期待しすぎてたかなという感想になりました。(ここからネタバレ的な文章です。) (僕の観る前の予想では)、「君は人間じゃない、こちら側の存在なんだ」と言われて、やっぱりそうだっ…

グリーンブック(ピーター・ファレリー)

昔ほど素朴に見られなくなっている点はあるとはいえ、啓蒙されるべき人々がいる限り、こういう映画はやはり作られるべきと思いました。映画としての骨格がしっかりしているのも良かった。 少し前だとbased onだったのが、ちょっと慎重になったのかinspired b…

毒戦 BELIEVER(イ・ヘヨン)

原作も最高だったけど、全然違う話になってましたね。だがそこがいい!(ネタバレかもしれないのでご注意ください。) オリジナルではジョニー・トーらしい「妄執(例えそれが正義の執行であれ金であれ)に囚われた男たちがやがてそのために破滅する」という…

魔界探偵ゴーゴリ1~3(イゴール・バラノフ)

控えめにいっても最高でした。ロシア映画ってハリウッド的なウェルメイドとは違った勢いがあっていいなと思っていたけど、正にそんな感じ。 ゴーゴリの採集した民話(『ディカーニカ近郷夜話』※)が実話だったら…そしてゴーゴリの生涯とは?と文字に起こすと…

アメリカン・アニマルズ(バート・レイトン)

ドキュメンタリーと俳優によるドラマが混在しているのがなんともいえない味わいで面白いつくりだった。そして「犯罪は割に合わない(特に素人にとって)」という当たり前のことがすごく染みてくる作品だったですね。 本人たちがあまりにキャラクターが立って…

ハイランダー2 甦る戦士(ラッセル・マルケイ)

ビデオで見たっきりだったけど、当時「ビデオで見るにはちょうどいい映画だな」という感想でしたが、まったく同じ印象でした。 ・志の低いテリー・ギリアムみたいな物語とプロダクションデザインだけど、本人としてはリドリー・スコットを狙ってたみたいです…

殺しの烙印(鈴木清順)

冒頭のパート、記憶してた以上に『深夜プラス1』の忠実な再現だった、けれども、『深夜プラス1』を読んでその気になった映画研究部が撮ったようなもっさりした感じと貧乏くささがあって、こんな感じだったっけ…となりました。(そこも含めてこの作品のチャ…

アラジン(ガイ・リッチー)

期待してなかったけど面白かったよ、という声を公開時に聞いてたけど、ちゃんとミュージカルとしての楽しさがあって本当に面白かったですね。(山ちゃんの部分だけは吹き替えが勝ってた印象。) ところでジーニーのハイテンションぶりが『マスク』みたいだっ…

ナイブズ・アウト(ライアン・ジョンソン)

『名探偵登場』とか『デストラップ』みたいな70年代ミステリ映画※の匂いがしてすごく好きだった。(タイトルフォントが正にそんな感じなんですよね。)TVの洋画劇場で親と見ていた思いでが甦るような… それにしても、端正で精緻な脚本とすっきりした撮り方を…

レディ・ガイ(ウォルター・ヒル)

ウォルター・ヒルこんなところで何やってんの?と一瞬思ったけれど、傑作じゃないにせよ、期待する方向性を間違えなければまずまず面白い映画ではなかろうか。要は舞台建ての違う「あのスペイン映画」ですよね。(ネタバレになるから書けないけど。)奇妙な…

美女と野獣(ゲーリー・トゥルースデイル、カーク・ワイズ)

娘が絵本だけじゃなくて映画も見たいというので、劇場で観て以来久しぶりに。もう30年になるのか…いわゆるディズニー・ルネサンス期に位置づけられる作品群の中では一番好きですね。 本当に全編にわたって魔法がかかっているような作品で、登場キャラクタ…

ビバリーヒルズ・コップ2(トニー・スコット)

この頃のトニー・スコットは「とにかく派手なだけで中身がスカスカ」と批判されていましたが、久しぶりに見てみたら本当に「派手なだけで中身がスカスカ」だったからびっくりしました。 当時映画館(やその後TVで)で観たときは全然気にならなかったんだけ…

オーシャンズ8(ゲイリー・ロス)

『オーシャンズ11』のシリーズというのは、恰好いいっぽい、お洒落っぽい、イケてるっぽいという「っぽい」に特化した映画だった訳ですが、あれはセリフの呼吸とか編集とか、監督のセンスに拠るところが大きくて、その点この映画では鈍重な感じが否めませ…

歌え!ロレッタ愛のために(マイケル・アプテッド)

シシー・スペイセクがこれでアカデミー賞を取ったということだけ知っていたのですが、納得の演技。年齢の幅と歌がすごい。 一方、個人的には凡庸な職人監督というイメージのマイケル・アプテッドの出世作という切り口でも一応知っていたのですが、ドキュメン…

アクアマン(ジェームズ・ワン)

ヒーローものなんだと思って見てたら、実写版「崖の上のポニョ」その後、だったのでびっくりしました。 面白そうなことは全部やってみましたというサービス精神がよかったですね。 ☆☆☆1/2 ※1985年、俺の父と母が出会った年だ、っていうから、え?俺より年…

愛がなんだ(今泉力哉)

総じて役者陣は素晴らしかったけれど、若葉竜也がとにかくすごかったですね。ワンカットの中で驚き、喜び、悲しみがないまぜになった感情が現れる。(演技とはそういうものだとは思うけれど)本当に本人としてそう感じているとしか思えない表情。よくあんな…

ビバリーヒルズ・コップ(マーティン・ブレスト)

冒頭、例の軽快なテーマ曲が流れるんだけど、それでもごまかしきれない荒んだデトロイトの現状がドキュメンタリー風に撮られてて、あれこんなだったっけ?とまず思ったのですが、その後で事件の発端となる古い悪友の帰郷が描かれると、ああ『ムーンライト』…

ライト/オフ(デヴィッド・F・サンドバーグ)

こんなオバケいたら怖いな、という思いつきの一点突破がいっそ清々しいという映画でした。役者さんたちが皆達者だから長編でもぎりぎり持った感じかな。 ここから監督を『シャザム!』に抜擢する思い切りがすごい。 ☆☆☆

フッド:ザ・ビギニング(オットー・バサースト)

アクションは頑張っていたけれど、脚本がガタガタだったのが残念でした。そもそも悪役たちの「アラビア軍に資金提供」という策略の目的が全然わからない。(な、なんだってー!っていう意外性以外に必然性がなさすぎではないでしょうか…そもそも「アラビア軍…

シャザム!(デヴィッド・F・サンドバーグ)

家族から自尊感情を傷つけるような揶揄いを受け続けると長じて心を病むと育児の本でよく目にするけど、悪役シヴァナはそんな感じだったから辛かった。(寄る辺なきもの、という意味で主人公の鏡像でもあるけど、これはヒーローものの定番ですね。)でも考え…

ターミネーター:ニュー・フェイト(ティム・ミラー)

(ネタバレです。)全体的にすごく無理がある脚本で、「スカイネット亡き後も送り込まれ続けるターミネーター」という設定も飲み込みにくいし、ダニーが標的として狙われる理由も若干弱いし、それを教えてくれるのがこれまたターミネーター(改心後)という…

ランペイジ 巨獣大乱闘(ブラッド・ペイトン)

怪獣映画らしさの点で『パシフィック・リム』より「らしい」し、スケールの取り扱いでは『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』より繊細さがあって良かった。前半の動物保護区の仲間が全然活躍しないところや、そもそも悪者姉弟は何がしたかったの?という脚…