2021-01-01から1年間の記事一覧

彼らは生きていた(ピーター・ジャクソン)

原題はThey Shall Not Grow Oldだから、「彼らが年を取ることはなかったろう」というような含みを持たせた題の方がよかったのでは、と思いましたが、それはさておき。最初は、現在において文書記録や日誌を朗読しているのだと思ってたのだけど、解説を読むと…

孤狼の血(白石和彌)

THE東映映画でしたね。三池崇史みたいな露悪的バッドテイストに走ることなく普通に作ってみましたという感じ。 今の時代の映画で、よくあんな澱んだ感じに作れたなと思いました。でもリアルタイムを知るものとしては、雰囲気が昭和過ぎるよね。ノルウェイ…

メランコリック(田中征爾)

明らかに低予算なんだけど、勢いと根性でなんとかするんじゃなくて(そういうのも悪くないけど)、脚本の妙と演技で見せるところが良かったですね。こういうタイプの映画ってアメリカのインディペンデント作品には結構あると思うけど、邦画でもやれるんだな…

‘THE SCRAP’ 懐かしの一九八〇年代(村上春樹)

もうゼロ年代リバイバルしようかというご時世だけど、これは80年代にリアルタイムでアメリカの雑誌を読んで雑感を書く、という村上春樹のコラムをまとめたものです。こんな本が出ていたって知らなかった。 今の眼で見ると、ううむどうかしら…という内容も…

透明人間(リー・ワネル)

低予算から逆算された工夫が随所にあって面白かったです。(いわゆる特撮は最低限に絞ってるし、高級邸宅も見えるところだけしか多分作ってないですよね。まあセットってそういうものだけど。)しかしながら、透明化というスペクタクルより猜疑心にフォーカ…

ジョン・ウィック:パラベラム(チャド・スタエルスキ)

いくら工夫と努力を重ねた殺陣でも、そればっかりだとやっぱりのっぺりした印象になるよね…という(2作目と同じ)感想でした。ジョン・バダムの「アクションシーンは頑張った分全部使いたくなるけど、見極める勇気が必要(大意)」という言葉をおくりたい……

ヘレディタリー(アリ・アスター)

一般の人に向けてそんな危険な球を投げたらあかんよ…と思いました。怖いというよりつらい映画でしたね。 ☆☆☆

夏の雷鳴 わるい夢たちのバザールII(スティーブン・キング)

よく見るようなありふれた光景から、予期せぬ異常な世界へ滑り落ちていく…というのがキングの真骨頂だと思うのだけど、いわゆる「普通小説」が多かったことを割り引くとしても、初期作品みたいな荒々しく禍々しいパワフルさには欠けるような気がしました。 …

拳銃は俺のパスポート(野村孝)

60年代の邦画(特にアクション)を見る楽しみのひとつは、この頃は色々と未整備で乱雑な時代だったんだな、と風景そのものを愛でることです。その点でも満足だったけれど、モノクロのソリッドかつパキッとしたレイアウトが最高でした。 タイトルはちょっと…

シン・エヴァンゲリオン劇場版(庵野秀明)

ついに完結しました。ネタバレなのでご注意ください。しかしそもそもネタバレなどとは別の次元で決着したので、あまり関係ないかも。そして大学時代に「なんかすごいロボットアニメが始まるらしいよ」と噂を聞きつけてきた弟と一緒に、こんな内容で夕方に放…

オーガストウォーズ(ジャニック・フェイジエフ)

なんか昨日見た夢の話なんだけど、なぜかロシアに住んでて、さらになぜか若い女性になってるの。それで幼い息子が紛争地帯に置き去りにされてるっていうんで助けに行くんだけどさ…みたいな映画でした。本当にどういう脈絡でこんな夢みたんだろう?といった風…

パラサイト 半地下の家族(ポン・ジュノ)

風刺強めの寓話やります!と構えてる時のポン・ジュノ作品(『グエムル』、『スノーピアサー』)は図式的になりすぎてつまらないと感じるのだけど、この作品もそんな感じでした。 ピンとこなかったのは、ジャンルとして「侵入者もの」が好きじゃないから、と…

きっと、うまくいく(ラージクマール・ヒラーニ)

ランチョーの破天荒さにちょっと「無責任シリーズ」を思い出したのだけど、適当なことをいっているようですごく真摯というところに(そしてまた、なぜ彼はそう振舞うのかの理由に)心打たれました。 一見勢い重視の作品と見せかけて(それでも構わなかったけ…

停電の夜に(ジュンパ・ラヒリ)

最初にクレスト・ブックスで刊行されて以来だから随分久しぶりに再読。当時も思ったけど、いかにもニューヨーカーが採用しそうな短編だなと改めて(クレスト・ブックスはこういう所を狙っている叢書です、というよいショーケースにもなっていた記憶がありま…

ヘルボーイ(ニール・マーシャル)

デル・トロ作品はディテールにこだわりがあって、独特の造形も相まって特異な世界観を構築していると思うけれど、作りこみすぎた感じが窮屈でもあって、箱庭的なのがなんだか物足りないという印象なのです。 さてリブートたる今作は、手堅いB級アクション(…

シティーハンター THE MOVIE(フィリップ・ラショー)

ヨーロッパ・コープ以上にゆるいフランス映画もあるんだな。 ☆☆

その女アレックス(ピエール・ルメートル)

ヴェルーヴェンのチームのでこぼこぶりがペナックの登場人物みたいだな、と思って読んでいたら話が『グルーム』みたいに重くて陰惨な感じになってきて…と思ったら訳者あとがきに正に引用されていたから、みんなやっぱり考えることは同じなんだなと思いました…

G.I.ジョー バック2リベンジ(ジョン・M・チュウ)

スネークアイズの雪山戦闘シーンだけは少なくとも面白いと思う。けれどもなんだか『RED2』と『ニンジャ・アサシン』の内容と記憶がごっちゃになってしまうんですよね。(明日はもう見分けがつかないと思う。) ☆☆☆ ※『クレイジー・リッチ』の監督だった…

ザ・フォーリナー/復讐者(マーティン・キャンベル)

ジャッキー映画ということで侮っているところがなかったといえば嘘になるけれど、予想外に見応えがありました。マーティン・キャンベルはこういう陰惨な話(『復讐捜査線』とか)だと演出が光る監督ですね。(若干ネタバレかもしれません。) ジャッキー映画…

バベットの晩餐会(ガブリエル・アクセル)

僕の中で3大ミニシアター系映画のひとつだったのだけど(あとの2つは『バグダッド・カフェ』と『ベルリン・天使の詩』)今回初めて見ました。内容は全て知っていたので見たような気になっていたのですが、実際に見てよかったです。 シンプルな話で、これと…

魔女と暮らせば(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)

著者の作品はいくつか読んでいるのですが、登場人物が皆弱点を抱えていて(たとえ強大な大魔法使いであっても)、そこが切ない。逆に、悪い人間もただ邪悪なだけじゃないと感じられるというか。人間の卑小な側面にふとした瞬間に子どもながらに気づく描写な…