毒戦 BELIEVER(イ・ヘヨン)

 原作も最高だったけど、全然違う話になってましたね。だがそこがいい!(ネタバレかもしれないのでご注意ください。)

 オリジナルではジョニー・トーらしい「妄執(例えそれが正義の執行であれ金であれ)に囚われた男たちがやがてそのために破滅する」というドライな話だったのだけど、誰かを信じたい(そして願わくば信じられたい)と望む男たちが、それが叶えられたために皮肉にも破滅してしまうというウェットな話になっていました。お国柄なのか作家性なのか、ともあれ対照的な物語になっていて、しかしどこか響きあうところもあるいずれ劣らぬ名作だと思いました。

 以下、心に残った点をメモ

ラクの虚無的な表情とそこから透けて見える思いを、過剰にではなく繊細に演じきったリュ・ジュンヨルの力量がすごかったですね。

・この映画、ちょっと違うな(すごい作品なのでは?)…と居住まいを正したのは塩工場のシーンで、善悪の理を越えたこういう世界が確かにあるのかもしれないと感じさせられたから。そこに辿り着くまでの「風力発電のある田園風景」も彼岸と此岸を渡るようで素晴らしかった。

・そのような意味で、急にドカンと、スケール感のあるバキッとした画が出てくるところはドゥニ・ヴィルヌーヴ風だなと思ったのですが、こういう撮り方ができるところまで韓国映画ってたどり着いたんだなと率直に感心しました。

・結末はあえてどのようにも取れるオープンエンドになっていたけれど、その余韻が沁みました。(この映画の閉じ方としてはベストだと思うし、そのことで作品の質がぐっと押し上げられたと感じました。)僕は同時に銃声が2発なったように聞こえたけれど…

☆☆☆☆