マスター・アンド・コマンダー(ピーター・ウィアー)

 「正統派海洋冒険もの」としてちゃんとしたつくりになっていることに驚いた。船上での日常生活がメインで、しかも2時間を越える大作なのに、ダレを感じさせないメリハリの効いた演出が素晴らしい。それはアクションだけでなく、船内の人間関係のストラテジーといったところまで描写に緊張感があるため。(戦闘シーンが少なくて退屈みたいな感想も目にするが、それでは「パイレーツ・オブ・カリビアン」になっちゃうでしょう。あれはあれで好きなんだけど、こういうドラマがしっかりした作品をもっと作ってほしいものである。)ラッセル・クロウが苦手で何となく映画館まで観に行かなかったのだが、ちょっと後悔した。

 ところで、仏私掠船がものすごく強大な存在として描かれていたが、まあ敵役が強くないと話が盛り上がらないので作劇上は正解なんだけど、実際には陸軍メインの国であるフランスは海上戦力が脆弱だったため、(サン・マロといった有力港湾都市の所有する)船の略奪行為を上納金を納めさせることでお目こぼしして、なおかつ海上防衛に役立てようとした苦肉の策だったということをメモとして書いておきたい。

 ともあれ、単純に「帆船同士の戦い」というのは画として燃えたなあ。