久しぶりに変なもん見た・・・と微妙な気持ちになる作品だった。まあ毒にもクスリにもならないような凡庸なものよりも、何かしら揺さぶられる方が観た甲斐はあるというものかもしれない。
まず、舞台の呼吸で演出されているのが違和感というかこそばゆい感じ。順撮りという訳でもないだろうけど、導入部では特に顕著だったように思う。加えて主役2人が大根なのが・・・しかしまあこんなもんかと諦められる、という意味で安心できるというネジレの構造が。特に酒井若菜は頑張ってるんだけど、寒い。人間的にはいい人な感じがするけれど、人柄の良さを見に行ってる訳じゃないからなあ。
演劇的演出の方は、戦略として選択されたものだと想像するが、効果的とは思われなかった。初監督作だからあえてトリッキーにいったのだろうか?むしろだからこそ正攻法で撮ってほしかったのだが。
ところで役者方面は恋敵役の監督自身や塚本晋也が(だけが)映画的にナチュラルな演技で、おいしいところをさらっていく。(自身の監督作でもやっぱり格好よく撮りたくなってしまうものなのだろうか。)他の面々もああいう演出だったら、と繰り返しになるがやはり残念。
作品紹介ではカルチャーギャップのラブコメという風に解説されていることが多かったのでそういう先入観もあったのだが、実際に観てみると、監督自身がアート寄りの世界に身を置いているせいか、門の石漫画の世界を描写する時のトーンには一本筋が通っていて、恋乃のコスプレ趣味ほど奇矯ではしゃいだ感じがしなかった。
というわけで、この物語は、特殊な嗜好をもつ女の子に恋した男が、愛の力でようやくその壁を乗り越えたと思ったとき、ある意味そんなのは些細なことだったと思われるような恋愛の踏絵に向かい合わされる、というもの。話がそこに至って、ああこれは「チェイシング・エイミー」的なことを語っていたんだなあと。あれもマンガが2人の接点だったしね。
少なくとも僕にとっては、そういう物語だと思われた。
あとふっきれた小島聖が夢に出そうに怖かった。