2004-01-01から1年間の記事一覧

野良犬(黒沢明)

三船敏郎が若い!そしてもちろん格好いい。(志村喬も) 「闇市の中、ギラギラした眼で手掛かりを探して彷徨う、三船演じる若い刑事」のシーンや、「野球場での犯人との駆け引き」といった名シーンが言及されることの多いこの映画。クライマックスである「駅…

釣り

最近釣りを始めました。昨日は瀬(離れ小島みたいな磯)に渡ってクロ(グレ、メジナ)狙いのフカセ釣りだったのですが、突然の雨でずぶぬれに。しかも釣果なし。迎えが来るまで帰れないし。 すこし前に糸井重里が釣りはおもしろくて、でもちょっとつらい、だ…

ピアニストを撃て

グーディス読書第2弾。この作品もソリッドなノワールもの。かつてピアニストとして名声を手にしたこともある主人公は、今は場末のバーでしがないピアノ弾きとして糊口をしのいでいる。彼は危険な稼業に手を染めている兄弟から距離を置いて、あえて孤独な人…

プライベート・レッスン 青い体験(クァク・チギュン)

まあ「ほえる犬は噛まない」のヒロイン、ペ・ドゥナが脱ぎ倒しているというところに惹かれて鑑賞したという事実に言い訳はしませんが。(こちらのほうが100倍かわいらしく撮られています。)いくつかの批評サイトで言及されているように、扇情的なタイト…

荒野のストレンジャー(クリント・イーストウッド)

イーストウッドの「恐怖のメロディ」に次ぐ監督第2作。そのせいか一筋縄ではいかない西部劇になっている。以前逮捕した無法者が刑期を終え、復讐に戻ってくることを戦々恐々としている小さな町に素性の知れないガンマンがやってくる。腕前を見込んで、市長…

狼は天使の匂い(デイヴィッド・グーディス)

これだけのボリュームで濃密な物語を織り上げる手腕に感心。最近の必ず上下巻にならずにはすまない(日本版でのこと)ベストセラーリスト系の作家には見習っていただきたいものだ。全くもって無駄のない、一部の隙もない研ぎ澄まされた文章。ステレオタイプ…

ヴァン・ヘルシング(スティーブン・ソマーズ)

夏の大作としては必要十分。アクションの組み立てがしっかりしている。話は駆け足だけど、まあ娯楽作品だから複雑にする必要はないし。一番関心したのはドラキュラ城での高低差を活かした落下アクションの浮遊感。夢に出てくるような不思議な感じ。しかし今…

マッチスティック・メン(リドリー・スコット)

※ネタバレします。 リドリー・スコットという監督は、ハリウッドの(といっても英国人だけど)なかにあっても、割りと作家性の強い作品を撮る人だという認識が初期作品においてはあったと思う。トレードマークはスモークと逆光、と揶揄を込めてそのスタイル…

どうして僕はこんなところに(ブルース・チャトウィン)

僕は機内誌を読むのが大好きである。正確には「翼の王国」を読むのが好きなのだけど(JALの方のやつは今ひとつ・・・)。気が利いた小話系のショートストーリーや、写真が主体の旅行記など、サービスのコーヒー片手に読んでいると「飛行機に乗ってる感」…

LOVERS(チャン・イーモウ)

今回もチャン・ツィイーは泣きべそ一歩手前顔。魅力はあるけど、もうちょっと芸域を広げた方がよいのではないか。タイプキャストが続くと今後のキャリアに障りがあると思う。今回も「HERO」ほどではないが、様式美の世界だった。開幕、遊郭のセットセッ…

シン・マシン(坂本康宏)

脳の一部が機械化してしまう奇病が蔓延し、罹患者が外部の機器を利用せずにネットワーク化された社会。奇病に対する免疫があった者は、そのネットワークからはじき出され、疎外されていた。免疫者=スタンドアロンである主人公の青年はその日暮らしを余儀な…

マラソン・マン(ジョン・シュレシンジャー)

マルト・ケラーとウィリアム・ディヴェインがものすごくニューシネマ顔。この映画は幼い頃淀川長治の「映画への招待」という宣伝番組で予告編をみたことがあったのだが、汗臭そうなダスティン・ホフマンが走っているところと歯科手術拷問のシーンがやけに印…

五月三十五日(エーリッヒ・ケストナー)

少年と叔父と人間の言葉をしゃべるローラースケートを履いた馬の3人組が、「なまけものの国」「電気仕掛けの都市」「さかさの国」など風変わりな国を経由して、南洋めざして冒険旅行を繰り広げる。あらすじを読むと、ガリバー旅行記のような物語の形式、ま…

海辺のカフカ(村上春樹)

先に読んだ友人に、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」みたいなところがある作品である、と聞いていたので先入観があったことは否めない。この作品を読み終わって感じたのは、確かにそういうところもあるが(図書館などの舞台や2つの物語が交…

ジェニファー・ガバメント(マックス・バリー)

マイレージキャンペーンをきっかけに始まった企業間抗争によって、全ての会社が2グループいずれかに属している世界。そこでは政府は無力化しており、各個人はファミリーネームの代わりに勤務先の企業名を名乗ることが義務付けられていた。皆が利己主義に走…

パンチドランク・ラブ(ポール・トーマス・アンダーソン)

今回はついていけなかった。 PTAの映画は、(タランティーノになぞらえていえば「パルプ・フィクション」より「レザボア・ドッグス」が好きなように)彼のフィルモグラフィ上では「パルプ〜」的ポジションにあたる「マグノリア」よりは、ソリッドな構成だ…

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(アルフォンソ・キュアロン)

3作目にして初めて面白かった。まず物語のツイストが効いている。それと原作ファンには不評らしいが、メインストーリーに力点をおいて、枝葉を剪定しているのが映画としての完成度を考えると正解だったと思う。前作まではエピソードの羅列という印象が強か…

恋は邪魔者(ペイトン・リード)

人工美の極致。映画とは総合芸術だなあ、と改めて。時は1962年、まだベトナム戦争の影がささない時代。メイン州からやってきた新進女性作家バーバラは期待を胸にNYにやってきた。彼女の著作は「恋は邪魔者」という女性の自立を啓蒙する進歩的な内容。…

帝王の殻(神林長平)

3部作が完結したとのことで、まずは2作目のこの作品から。労働力であり兵器であった機械人(月人)との戦いで疲弊した地球から離れて独自の文明を築いた火星。そこでは個人用人工頭脳「PAB」が情報端末の域を超えて、第2のアイデンティティにまで成長…

夜更けのエントロピー(ダン・シモンズ)

今まで作者の作品はハイペリオンシリーズと、20世紀SFに収められた「ケンタウルスの死」及び90年代SF所収の「フラッシュバック」しか読んだことがなく、1作目は最高だったものの、ニューエイジ風の怪しい展開に萎えてしまったハイペリオンの4部作…

スチーム・ボーイ(大友克洋)

残念な結果である。 97年にバンダイの「デジタルエンジン構想」の2本柱(もう一方は押井監督の「G.R.M」)として発表された時は、大予算でどんなすごい作品を作ってくれるのだろうかとワクワクしたものであるが。これだったら「大砲の街」の方がまだし…

天使だけが聞いている12の物語(編:ニック・ホーンビイ)

J文学ならぬE文学コンピレーション風の短篇集。トレスポ、ブリジット・ジョーンズの日記などの現代(ポップ系)英文学作家の短篇を、ハイ・フィデリティの作者が編集した短編集。共通のテーマみたいなものはあまりなくて、概ねそれぞれの作家の名前から想…

ヨット・クラブ(ディヴィッド・イーリイ)

表題作は映画「パイレーツ」を何となく思い起こさせるテイスト。まるで違う話なのに。「異色作家」選集がブーム、というかブームにしようという雰囲気である今日この頃。そのいくつかに接しての暫定的な結論。僕にとって異色作家とはロアルド・ダールだけで…

スパイダーマン2(サム・ライミ)

ジェームズ・フランコっていろんな意味で伊藤英明に似てるよね。前作より面白かった。1作目では形容しがたい不完全燃焼感があったのだが、今回は満喫満足。個人的にはビルからビルへのウェブアクションより、「張り付き」の方が好みなので重力を無視したか…

コンフェッション(ジョージ・クルーニー)

思ってたより全然よかったよ!テレビの隆盛期、この業界で天下を取ってやろうと悪戦苦闘していた男チャック・バリス。思うようにならない現状にくたびれていたある時、彼は「刺激的で金になる仕事」にスカウトされた。雇用主はなんとCIAだった。「初監督…

最近のJポップ

今日FMかけながらドライブしていて思ったのだが。 なんかいろんな曲にラップ詰め込みすぎ。 少しでも間奏があろうものなら、もうラップをねじ込む。ゆるく聞くことが出来ない窮屈さを感じる。本当、普通のアイドル歌謡だなとちょっと油断して聞いていると…

21グラム(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ)

ぶっちゃけ「ハート」やん?と予告編を見たときには思ったものだったが。いろいろなところで指摘されているが、時制のシャッフルという手法は最近多用されすぎている。ストーリー上の必然性があればまだしもなのだが、そうでなければ物語をストレートに語る…

悪魔のいけにえ2(トビー・フーパー)

僕のフェイバリット・ホラーである「悪魔のいけにえ」。あのドキュメンタリーチックなざらざらした映像。それでいてハッとするような美しい画があったり、真にオリジナルでアーティスティックな骨のオブジェ。という訳で、あの(悪)夢よもう一度と鑑賞。結…

カラブキ(中川いさみ)

面白くなくなってしまった。しかも「最近なんかつまんなくなったな・・・」風に面白さが逓減するのではなく、一ヶ月くらい前のある号から突然、全く、面白いと思えなくなった。「全か無かの法則」のように、ある刺激のパターンが一定量を越えたことでマヒし…

奇術師(クリストファー・プリースト)

いろいろなところで話題になっていたので読んでみました。ややネタバレかもしれないので、未読の方は以下読まないでください。 まるで策略のように、ある貴族の地所へ呼び出された若い新聞記者。呼び出した主である同年代の女主人は、「我々は、先祖によって…