アイデン&ティティ(田口トモロヲ)

原作の再現度は非常に高いけれど、映画単体としてみたら残念な出来であった。思うに、監督が役者でなく、ばちかぶりのトモロヲとして対象にベッタリ寄り過ぎて、物語を相対化できなかったためである。

こんなのはロックじゃない、といつも苛立ち、そのくせそんな自分自身に自信も持てずに恋人に依存せずにはいられない。そんな主人公の甘ったれぶりに腹が立った。(独善的で自分に甘いのはむしろロッカーらしいのかもしれないが。)これは原作どおりなので仕方ないんだけど、あのみうらじゅんのヘタっぽい絵のフィルターがなく、役者がまんま演じているところをみてるとちょっと・・・

だが矛盾するようだけれども、そんな主人公中島を演じている元ゴーイング・ステディの峯田和伸が役者としては一番輝いていた。実にナチュラル。一方演出意図なのだとは思うけど、麻生久美子演じる「彼女」に棒読み調で「キミの思う道を行けばいいんだよ」とか言われるとあまりに都合よすぎて逆に萎える。お人形さんみたいで血が通っていないような。(キミという呼びかけ方はこれまた原作どおりだったと思うが、映画としては中島君とか、もっと別になんか違う台詞にできなかったのかとずっと気になった。)これはバンドのほかのメンバーもそうで、監督の主人公に対する思い入れの強さ故か、相対的にステロタイプで書き割りじみていた。

ディランのハーモニカもなんだか耳障りだったなあ・・・次回は頑張ってください。