座頭市 血煙り街道(三隅研次)

娯楽作品として大変よくできている。この頃の映画の予算規模というのは現在と比較してどの程度のものだったのか。とにかく画面の隅々まで心配りが行き届いている、という印象を受ける。こういう「しっかりした」邦画作品がまた観たいものである。王道。

子連れ狼シリーズの影響による思い込みか、またひょっとしたらシリーズの他の作品ではあるのかもしれないが、エロの要素がないのが意外だった。そして好印象。いやあってもいいのだけど、この物語に関してだけは全く必要ないと思う。

逆にいえば、この作品は必要な要素(鑑賞後に思ったことだが)からのみ構成されていて、その無駄のなさ加減に感心する。なんとなく2時間は尺があったほうが・・・というルーズなつくりが常識化している現在の映画界は顧みて反省してほしい。この映画の87分というタイトな時間は、その編集過程で身を切るような思いをして、構成上の無駄と必要を選別した結果であるはずである。

詳しい人にとっては今更な話なんだろうけど、殺陣が美しい。逆手に持った仕込み刀でのアクションは、殺陣師にとってもかなり難易度が高いのではなかろうか。(アドリブという説もあるらしいが、伝説じゃないかなあ。)
加えて、グラフィカルな画面構成。三隅作品というのはスプラッタチャンバラとしての評判が先にきて、そちらの評価があまり聞こえてこなかったのだけど、画的なセンスも素晴らしい。やっぱりちゃんと観てみるもんですね。