ゴジラ-1.0(山崎貴)

 正直、ドラマパートの演出がむずがゆくなるほど厳しかったです。どうしてああいう感じになるのかな。安藤サクラを比較すると分かりやすいけど、是枝監督などのように「そのような人が話している」という自然な演出は役者のポテンシャル的にも可能なんですよね。つまるところ、山崎監督としては、ああいった大仰な喋り方がベストというビジョンがあるということなんでしょう。しかしそれは人物というよりキャラではないか?そこまでしないと伝わらないと思っているなら観客なめんなよと思うけど。本気で次のゴジラは低予算でいいから是枝監督か濱口監督が撮ってくれないかな。

 一方、オスカーを受賞した視覚効果は本当に頑張っていた。海のシーンにおける波のリアクション(船やゴジラに対する)の自然さに顕著だし、まさに海のシーンに授与したんじゃないかなと思いました。

 物語的には、主人公の敷島が大戸島でゴジラの幼生を仕留めそこなったことが発端であることになっているのだけど、あの場面で仮に飛行機の機銃を当てられたところで殺せなかったと思うし、なんなら敷島がまさに言うように整備士たちが撃ってもよかった場面ですよね。あれって、特攻から逃げてきたならせめて怪獣を命がけでやっつけろよという意識が(橘に)あったとしか思えない。皆で協力して何とか撃退しようという工夫があった上でならばと思うけど、敷島が自責しなければならない理由はないと思いました。ただ、そのようななりゆきはあり得ると思うので、ストーリーの瑕疵とは思わないのですが。

 一方、あの場面のゴジラは、深海に棲んでいる得体のしれない生き物の不気味さが出ていて、中途半端な大きさであることの怖さを含めて、素直にいいなと思いました。

☆☆☆1/2