『極めて私的な超能力』がすごく良かったので読んでみました。大雑把にいうと現代韓国プロレタリア短編小説集なんですが、社会問題への意識の在り方とかその一方でのすっとぼけたユーモアとか、小説界のポン・ジュノという感じがしました。腕も超一級。作者の引き出しというか小説世界の幅がすごいなと思いました。
韓国における労働運動への本気度ってこの2000年代にあってもかなり高いのだな(何となく80~90年代までと思っていた)、という学びがありました。一方のめり込み過ぎることでの悲劇も冷徹に描いていて、考えさせられる。正直前半に配置されている作品ほど内容がシビアで、辛さのあまり読むのをやめようかと思ったほどだったのですが、後半に進むにつれいわゆるポン・ジュノ感(『ほえる犬は噛まない』的な)が上がってきて、読後感は悪くない。やはり配置って大事ですね。
特に誰が悪いという訳ではないのに、それぞれの立場故に閉塞感が極まっていく感じや、利便性の向上の名のもとに「ICT化」が進み、もはや誰得の領域に、むしろディストピアの様相すら呈しているサービス環境とか、どこの社会も同じなのだなと身につまされました。特に心に響いたのは「バイトをクビに」「みんな、親切だ」「鳥は飛ぶのが楽しいか」かな。あと『極めて私的な~』の「センサス・コムニス」みたいに作者の実体験を装った作品がなんか好きです(「音楽の価格」)。
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