MEN 同じ顔の男たち(アレックス・ガーランド)

 気持ち悪さが極まっていましたね。ホラー映画ということを踏まえるならばその強烈な印象が残るだけでも成功なのかもしれませんが、ありていに言えば「流行りの」フェミニズム・ホラーなんですよね。その点から評価するなら、物語の端々に現れる不快なシチュエーション、「おい、いまなんつった?」と画面に対して問いただしたくなるようなデリカシーのないセリフ、で女性が日常感じるであろう不快感を男性観客も仮想体験できる案配にはなっているのだけど、痛し痒しというべきか、気持ち悪さが勝ってしまい「繊細な不愉快さ」が薄まってしまう印象もありました。

 難点を上げるなら、よくない意味でA24らしい、アート写真のように撮られた場面が些か気取りすぎに感じた(なんか本当にA24ではよくある印象です)のと、結末の脱皮というか転生シーンはホモソーシャルの在り様の連鎖、その果てにある夫の振る舞い、というのをあまりにも図式的に絵解きしてしまっていてちょっと直球すぎでは?とおもいました。全体としてテーマが前景化しすぎているかな?

 夫役と同じ顔の男役の役者さんは、こういう役をあえて演じるなんて勇気があるなと思いました。

☆☆☆