ゴジラ(本多猪四郎)

 芹沢博士の中では、最初からオキシジェン・デストロイヤーの使用を決定するというのは自らの死とセットだった、と考えると不憫すぎて泣けました。同時に、現実の原爆もそのようにせめて1回限りの再現性のないものだったらよかったのにという作り手の切実さを感じて辛かったですね。その点からいっても、ハリウッドのゴジラって総じて原爆の扱いがアイテムどまりでどうしても受け入れがたいのだけど、芹沢博士の持つ意味を考えたら、ああいう感じで安易に名前を使うのはやめてほしいし、さらに汚すような息子の在り様なんて言語道断だと思います。

 ところで初代ゴジラの怖さはよく言われるところですが、ゴジラの容赦なさがというよりは作品全体のトーンが怖いですよね。最後にゴジラを葬っても勇ましい音楽が流れることなく、むしろ鎮魂の祈りをこめた「終」が粛々と掲げられる。

 映画としてのリッチさが随所にあって、こういう感じで作るのは時代性もあって二度とできないだろうなと改めて感じました。

☆☆☆☆

※わざわざ書くのも無粋だけど、尾形との様子を見て、芹沢博士が恵美子は最初から手の届かない存在だったんだと(もともと分かってはいたのだけど)理解した時、また絶対秘密にしてくれと頼んだ秘密の発明を最初に尾形に話したのか…と知った時の絶望がもう泣けて仕方がないんですよね。その上で最後の最後に「幸せになってください」と伝えるところも書いているだけで泣けてくる。