極めて私的な超能力(チャン・ガンミョン)

 アジアの作家で、日本のポップカルチャーに勢いがあった時代(80~90年代)に影響を受けた世代の作家の作品を読むと、良くも悪くも表層的で物足りないなと思うことが多かったのだけど、それは正に「表層的であること」にアコガレを抱いて※オマージュしているから当然の帰結なんだけど、このSF短編集もタイトルからしてその系譜かなと思ったら、全然違った。テーマの射程の長さ、振り幅の広さ、いずれを取っても素晴らしかったです。

 それとこれは個人的な好みだけど、ケン・リュウやその紹介作品の、ゴリッとSFならではの異物感を投げ込んでくるよりは「情緒に落とす」感じが苦手で、この作品集ではそうじゃない方向性、クールさに惹かれました。

 むしろ欧米のSF黄金期(「あなたは灼熱の星に」)だったり、はたまたイーガンやチャンの思考実験の匂い(「アラスカのアイヒマン」「データの時代の愛」)もあるし、びっくりしたのは結果として光瀬龍みたいな日本SFの勃興期のテイスト(「アスタチン」)もあったりして、すごく充実していました。と思ったら、話題になっていた『我らが願いは戦争』の作者だったんですね。他のSFでない作品も読んでみたい。

☆☆☆☆

※要は飽食的ライフスタイルが満喫できる水準に至ったことの表明みたいな要素もあるからだと思う。