2023-01-01から1年間の記事一覧

犬王(湯浅政明)

特異なキャラクターデザインの面白さや動きの演出の滑らかさは良かったのだけど、肝心の楽曲や舞台効果的なものは奇抜さを狙った凡庸という感じがして。わざと時代にそぐわないようにとロック風にしたのだと思うけど、ありきたりな印象でした。 ☆☆☆ ※物語の…

ライダーズ・オブ・ジャスティス(アナス・トマス・イェンセン)

ごく大雑把な枠組みでいうとビジランテものなんだろうけれど、どこに連れていかれるのか分からない面白さも含めてよかったです。(着地はどこなんだ?という面白さの連想で『ヘッドハンター』を思い出したのだけど、あちらはノルウェー映画だったんですね。…

The 500(マシュー・クワーク)

ロビイストのお仕事もの、立身出世ものだったらもっと面白かったのに、と思いました。後半完全にアクションの力押しになってしまうんですよね。読ませるだけの力量はあるけど、期待してたのはそれじゃないというか。 この後に書かれた『ナイト・エージェント…

バッドガイズ(ピエール・ペリフェル)

すごく子供向けという感じがして(キャラクターデザイン(特に署長)とか話の運びとか)、対象が正にそうなんだからそれ自体は正解なのかもしれないけれど、正直物足りなかったですね。主体的にいいことをしようとする契機にすっきりしない部分があったから…

10 クローバーフィールド・レーン(ダン・トラクテンバーグ)

舞台劇原作といわれたら信じてしまいそうなつくりの密室劇でしたね。まああるタイプの典型であって、普通かなという感じ。(※意外とデイミアン・チャゼルが脚本に参加してたりするんだけど。)私たちの戦いはこれからだぜ!という結末だけど、お疲れ様です、…

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(クリストファー・マッカリー)

(ネタバレ)『ローグ・ネイション』の現場は、設定だけ決めてとりあえず撮ってみるというような香港映画みたいなスタイルだったという(あの緻密さからすると)俄かに信じられない話が伝わってきたけど、その点で言うとむしろ『フォールアウト』の方が専ら…

君たちはどう生きるか(宮﨑駿)

なんていうか、「君たちはどう生きるか!」というより「こんな夢を見た」みたいな抽象的な作品でしたね。というか「俺はこう甘えるんだ!」っていうすごくエクストリームなプレイを見せられた感じだった。答えて曰く「自分は結構であります!」 しかしいつ終…

運命じゃない人(内田けんじ)

内田けんじ作品はどれも好きなんですが、やはりこの作品が一番好きかな。緻密な組み立てに目が行くのであまり言及されないけれど、ダイアローグが実はすごく上手ですよね(特に勇介のセリフ)。『アフタースクール』にもあったけれど、清く生きられる人とそ…

バイオレント・サタデー(サム・ペキンパー)

こんなにオッパイがいっぱいな映画だったとは。小学生くらい(多分)に初めてTVで見たときはそういう印象なかったから、おそらくカットされてたのかな。ちょうどいいサイズになるし。 今いろいろ映画を見た上で顧みると分かるけど、『パララックス・ビュー』み…

騙し絵の牙(吉田大八)

コンゲームものというより組織内のパワーゲームの権謀術数だったかな。「お仕事もの」として一定の面白さはあったけれど、全体としては普通でした。 大泉洋演じる速水のメフィストフェレス的な得体の知れなさには目を引かれたものの、アート映画ではないから…

X エックス(タイ・ウェスト)

正直こわいというよりつらい感じの映画でした。 それを言っちゃあおしまいよ的な話をあえてする、踏み込む、というスタンスは個人的には『ヘレディタリー』に通じるものを感じたのだけれど、その結果怖かったとしても、それに意味があるのかな、という気がし…

シャドウ・イン・クラウド(ロザンヌ・リャン)

もともと期待してたけど、予想を超えて面白かったです。アイディア一発かと思ったら遥かに上等な映画でした。雲間から見える地上の景色が刻々と変化していくところや、機内に散らばる肉片など端々のディテール描写が効いている。銃座の心細さとか、そこから…

風の谷のナウシカ(宮崎駿)

子どもたちと一緒に見たのだけど、多分20年ぶりくらいになるのかな?小学5年生くらいに町の映画館で初めて観て、興奮で地に足がつかなかったあの夏休みを思い出しました。(その後何回かテレビでも見たけど。) 読んだ後だとこれって完全にアニメ版『砂の惑…

ケイコ 目を澄ませて(三宅唱)

難聴のボクサーを体現する岸井ゆきのの凄さ。ボクシングのリズムを自らのものにしている所もすごいけど、難聴が前提だから、話しかけられたり自然音に対して反射的に身体が反応してしまいそうなところを「聞き流す」ところが輪をかけてすごいと思いました。…

砂の惑星(フランク・ハーバート)

(皮肉でいうのではなく)端的に言って「厨二」の夢みたいな話でした。物語の最後でためにためてた要素が爆発するのすごく爽快でしたね。まさにカタルシス。 映像化が不可能(よく使われる表現だけど)と言われていたのは、物語の中心が(言葉の応酬としての…

別れる決心(パク・チャヌク)

ファム・ファタールに翻弄されるという点で、本当のノワールでしたね。面白いつなぎ方やハッとする画などが多々あって、映画の愉しさはたくさんある作品だと思うのだけど、持って回った語り口が冗長に過ぎる感もありました。 ヒッチコック的陶酔(『めまい』…

G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ(ロベルト・シュヴェンケ)

ニンジャ・ファンタジーが過ぎるというか、主人公に全く共感できないのがすごい。もうちょっと脚本に工夫ができたんじゃないかな。あとシリーズ1、2作目より3割がたスケールもアクションも控えめな印象でした。(アクションもっさりすぎるのでは?) ☆☆☆

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(ホアキン・ドス・サントス他)

最近は親の目線で観ることが多いけど、ドラマを生まんがための「設定された」親と子の葛藤はもういいのでは(凡庸だな)と思う。特にグウェンの方は耳を傾けてしかるべき状況もあるのに、「いや逮捕する(でもしたくはない)」なんて、映画の都合上の無理を…

最後の決闘裁判(リドリー・スコット)

最低なやつを演じる時のマット・デイモンは本当に最低ですよね。 それはさておき、ベン・アフレックとマット・デイモン(共同脚本)にとってはワインスタインを見て見ぬふりをしてきたことへの禊の意味があったのではと思いました。 というテーマが、この作…

ジョジョ・ラビット(タイカ・ワイティティ)

監督の監督としての映画を見るのは初めてだったけど上手でしたね。母親が子ども(と自身)の心を癒すために演技をしてみせるところは『ライフ・イズ・ビューティフル』的だったり、「家族だけの聖域」を強調するかのような可愛らしい美術※についてはウェス・…

アムステルダム(デヴィッド・O・ラッセル)

ポリティカルサスペンス・コメディになるのかな?美術や衣装が目に楽しく、役者陣も達者なのでとても面白かった。でもかなり苦戦したらしいですね。 作品としては、監督のいつもの自意識過剰な韜晦趣味は後退して、全体としてのメッセージがものすごくストレ…

美味礼讃(海老沢泰久)

バブルにはぎりぎり間に合わなかった世代なんだけど、ピラミッドとかタイユヴァンとかポール・ボキューズみたいな固有名詞が登場するので、すごい人脈だな、いやそれを引き寄せる辻静雄の人間力がすごいのか。 と一瞬思うのだけど、今の日本の「本物のフラン…

トイ・ストーリー4(ジョシュ・クーリー)

3の完璧なエンディングのあとに足すことなんてあるのかな?と思いましたが、あの後の物語としてはかなりよかったと思いました。 その一方でやはり、需要があればシリーズは引っ張れるだけ引っ張るという在り方はいかがなものかとも思います。 ☆☆☆☆ ※「無限…

ナイル殺人事件(ケネス・ブラナー)

ミステリにおける登場人物はつまるところ駒であって、人間ドラマは展開のための「設定」なのであまり本気で見ても仕方がないのは分かっているのだけど、見終わった後にどうしても「あれ、そしたらそんな回りくどいことしなくてもよかったのでは?」と思って…

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(ジェームズ・キャメロン)

クジラ漁ダメぜったい、という展開で、もう、ちょっと見続けられませんでした。 「トゥルクンはとても高度な知性を持った生命体で(故に尊重しよう)」というんだけど、逆に「知的でない」と見做したらその生き物はどうなってもいいということなんですかね?…

ビースト(バルタザール・コルマウクル)

ある程度の危険は承知していたものの、自分の力の及ばぬ未知の領域に分け入り、思いもよらぬ展開で命がけのサバイバルをすることになり、地獄めぐりの果てに、結果として人生の意味を再発見する、という話ですが、これってほぼ『ゼロ・グラビティ』だなと思…

X-MEN:ダーク・フェニックス(サイモン・キンバーグ)

最近ディズニープラスで配信されている「観ていなかった作品」の落穂拾いをやっていてひとつ気づいたのですが、映画会社が「今年はこれでいく!」という気合で作った規模の作品を見るのは、多くても月1回くらいにしておかないとお腹いっぱいになるしもった…

アリータ: バトル・エンジェル(ロバート・ロドリゲス)

さすがキャメロンというべきか、SF的な結構もしっかりしてたし画的なケレンもあって想像していた以上によかった。続編見たいですね。 ところで保護者であるイドの心配は至極真っ当というか、あんなスポーツともいえない乱暴で残酷なゲームを楽しめる感覚はち…

フリー・ガイ(ショーン・レヴィ)

公開時の高評価を目にして見てみたいと思っていたのだけど、ちょっと期待しすぎましたかね。ショーン・レヴィらしい「ちょうどいい案配」の娯楽作でした。 『マトリックス レザレクションズ』の枠組みで語る『トゥルーマン・ショー』といった趣で、主人公の…

アントマン&ワスプ:クアントマニア(ペイトン・リード)

(批判多めになりそうなので、楽しく鑑賞された方は読まれない方がいいかもしれません)当初の作風から随分遠いところへきたと思うのだけど、まだ律儀にリード監督なんですね。それはさておき、電子紙芝居感が強かったのとマルチバースはもうお腹いっぱいだ…