ハンターズ・ラン(ジョージ・R・R・マーティン、ガードナー・ドゾワ、ダニエル・エイブラハム)

 ここは辺境の植民星サン・パウロ。荒くれ者の探鉱師ラモンは酒の喧嘩で大使を殺してしまったことから、ほとぼりが冷めるまで密林の奥地に逃避することにした。ところがひょんなことから異星種族の巣を発見してしまう。捉えられたラモンは彼らの下から逃走した地球人を捕まえるため、異星種族の分離体マネックと供に「猟犬」として駆りだされるのだが・・・
 海外のSF作家ってよく合作するけれど、権利関係以前にテーマとか細部の調整などでよく揉めないな・・・と目にする度にいつも思ってました。という意味で、この作品が世に出るまでの経緯についての記事がおまけとしてはとても面白かったです。さて物語はSFの枠で語られる秘境小説(ピカレスクロマン風味)。ピカレスクロマンはその構造にビルドゥングスロマンを内在させている、というのはよく言われるところですが、まさしくその定義に則ったストーリーになっているのが最大の読ませどころでしょう。
 そしてまたバディものでもあるという。バディもののフックは、当初は価値観の異なっていた2人が旅の過程で共感を深めていく、という部分にある訳ですが、異星種族は個体としての意識を持たないという設定のため、これ以上ないくらいの「他者」となっています。となると作者の「主人公がマネックに共感することに読者を納得させる」難易度も当然上がってくるわけで・・・ここもまた上手かった。
 ともあれ、バディものであり、かつビルドゥングスロマンであるという構造がプロット上の必然として準備されているというのがとても巧みで唸らされました。
☆☆☆1/2