ディスカスさんの計らいで奇しくも新旧立て続けの鑑賞になりました。ヘビーすぎるだろ・・・と思ったけれど、それはさておき石井作品ではやはりこれが一番好きだと再確認(どころか邦画のオールタイムベスト10に入るくらい)。ところで映画の話を女の子とするときは、あんまり熱く語りすぎてはならないということを長じるにつれ学習するわけですが、この映画を観ていて、なおかつ好きだという人には遠慮なくマニアックな話をして大丈夫という試金石として重宝してまいりました。
・新作は人物描写はさておき、物語の吸引力が弱かった印象だったけど、こちらは単純な復讐譚にはならないねじれた構造(ヒロイン名美を付け狙う敵役仙道を倒せばカタルシスが訪れるという単純な話ではない)のため、どういう決着を見せるのか目が離せない。絶妙なプロット。
・要所で登場する超長回し。必然性のない長回しをしてしまう監督はこれを見て反省してほしいものです。映画だな、と思います。
・仙道を演じる椎名桔平はこの作品を切っ掛けにブレイクした訳ですが、それも当然の狂犬のような演技。主人公の部屋のネオンを嘗め回すように眺める目は完全にイッてしまってる・・・ステキ!
・本筋を彩るエピソードも魅力的。拳銃を入手するため主人公が旧友の田口トモロヲが経営するゲイバーを訪ねるくだりが特に好きです。さっきまで親しげに話していたのに、豹変して「いつかこうしてやりたかったんだ!」と蹴りまわされる竹中直人。しかし・・・という行間を感じさせるシーンですね。
・余貴美子のファム・ファタールぶりが凄い。生活に倦み疲れた中年女かと思うと少女のようなあどけない一瞬を見せたり。であればこそ、主人公が間違っていると理性では分かっていながら、因業の泥沼に進んで足を踏み入れていくことの説得力があるのだと思う。(佐藤寛子にそこまで求めるのは酷だけど、物足りなさの原因はやっぱりそこかな・・・。)以前見たときは何故か気付かなかったのですが、最後のシーンの名美は「狂えるオフィーリア」のイメージで撮ってたんですね。監督の余貴美子への思い入れが窺えるいい画だったと思います。
☆☆☆☆1/2
※恥ずかしながら結末のクローズアップの意味を理解していませんでした。特典の監督インタビューで名美の顛末の正解を知って17年ぶり?にショックを受けております・・・ベッドのシーンにミスリードされてたのかな。