「何かが終わる時」は、映画みたいなフィクションと違って明確なものじゃなく、グズグズとやってくるものだ。という当たり前のことを、微妙なさじ加減ですくい上げる、その繊細な描写にグッとくる。同じようなタイプの作家として吉田修一を連想した人も多いんじゃないかと思う。
でも何も起こらないなりに、ひとつ一つのエピソードに忍ばされたフックが実に巧みで、いわゆるリーダビリティは高い。< ごめんねといってはいけないと思った。「ごめんね」でも、いってしまった。 >というやりとりの場面が僕には一番印象深かったのだけれど、小説というのはそういう箇所がひとつでもあればOKなんだなと最近は思う。
けど、けれども、それだけに残念だったのが『泣かない女はいない』というタイトルと結末。肩に力の入らないアンチクライマックス志向が心地よかったのに、ここだけは紛れもなく「決め」にいってる。これもまあ読む人によっては逆に上手いと感じる箇所かもしれない。ごく初期の作品だから気合を入れすぎたのかなぁ。
お気に入りはカバー裏の「二人のデート」だった。
☆☆☆1/2