ベルヴィルって書くならランデヴーだろ!という突っ込みはさておき、美しい悪夢としかいいようがない独特の世界観。素晴らしすぎる。『ロスト・チルドレン』を初めて観たときのようないわくいい難い感覚に襲われました。
あらすじから予想していた「心温まる物語」からは1パーセクくらい離れた、心底侘しい気持ちになるペーソス溢れる作品。物語はそれなりにハッピーエンドなのに、だからといって(観客の気持ちが)救われるわけではないところに、この映画の持つある種の力強さを感じた。ちょっと逆説的だけど、実際に見た人には割りと共感してもらえるんじゃないでしょうか。
ジャンルとしてはアート・アニメに分類される性格(クエイ兄弟ほど針が振り切れているわけではないけれど)のもの。特徴的なのがグロテスクなまでに誇張された登場人物の造型。子供がみたらトラウマ確実。それでいて行き届いた全体の調和のおかげで不思議な美しさを湛えている。アート系の映画についてはアナログ命という先入観があったのですが、CGがよく馴染んでいるのも賞賛されるべきポイントでしょう。音楽も絶品。テーマ曲の「ベルヴィルの三つ子」がエンドクレジットで繰り返されるとき、クラブ風のアレンジの展開をみせるのが鳥肌が立つほど格好良かった。監督がラインハルトへのオマージュを明言するように、マヌーシュ・スウィングの素敵さ加減が際立つ映画でもありました。
ところで対抗馬だった『ファインディング・ニモ』にオスカーを授与したことに対する批判がネットで散見されますが、それは作品のベクトルの違いであって、そういうあり方もアカデミーの見識だと僕は肯定したい。
☆☆☆☆1/2