映画化されたSF小説アンソロジー。メジャータイトルではなくてレア度を基準に集められたものなので、飛びぬけてすごい傑作というのは正直なかったと思います。(あ、スタージョンの『殺人ブルドーザー』は映画の方がガックリな作品だったせいもあるのか、かなり盛り上がるSFサスペンス・アクションでした。)
印象深かったのは、ウォード・ムーアの『ロト』。『性本能と原爆戦』の原作という、タイトルからすると何かいかがわしいムードなんですが、内容は古典的な終末もの。
僕は「終末もの」が大好物で、映画でいうと『ディープ・インパクト』なんかが最高。恐ろしく破壊的で強大な何かからの逃走、しかもご近所レベル(なぜなら一人称視点だから)というのが典型的な「悪夢」のパターンだと思うのですが、『アルマゲドン』より『ディープ・インパクト』の方が優れていた点というのは、まさしくそのシミュレーション性にあったと思います。端的に映像でいうとハイウェイが渋滞で全く動かなくなる、という画。(最近だと『宇宙戦争』の車が群集に取り巻かれるシーンもよかったですね。)
ということで、そんな僕にとってはストライクど真ん中の小説でした。内面描写がものすごくリアルで共感を誘う。都市→ご近所→家族、とコミュニティの規模が小さくなってもなくならない争い。極限状況の中で主人公である父親が選択したことは・・・これまた終末ものの傑作、黒田硫黄のデビルマントリビュート作品『ゼノンの立つ日』を何となく連想したりして。
☆☆☆1/2