愛のメモリー(ブライアン・デ・パルマ)

 ヒッチコックごっこはシネフィル系の映画作家がかかる「はしか」みたいなものですが、ブライアンはこの頃、よっぽどこじらせていたのだなと思いました。今も完治してないけれど。
 メイキングを見てみると、いかに『めまい』に迫る傑作となったかを関係者が得々と語るのだけど(この作品は『めまい』を下敷きにしていること自体を織り込み済みのものとして脚本が書かれている)、ふたこと目には「めまい」を連発するデ・パルマをみていると、「そんなに『めまい』が好きなら『めまい』と付き合えばいいじゃない!」とこの作品を代弁してあげたくなるくらい。まるで昔の彼女に未練たらたらの男の様に『めまい』に固執する監督。ああ、だから原題が『オブセッション』なのか!
 と、上手いこと言った気分に浸ってみたかっただけなんですけど、年令の違う役を見事に演じ分けたジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドだけは素直に賞賛したい。作品自体はいつもながらの無理くりデ・パルマ論理を了解できるなら楽しめますよ。
☆☆☆