読書
とある小さな炭鉱町で住人全員が奇病に罹り全滅寸前という事件が起こる。ジャーナリストとして実績を上げたい血気盛んな「私」は、行政官ブレアに請じられるままにその町を訪れる。どうやら事件の核には「植民地から来た男」が関わっているらしいのだが・・・…
(ジェラルド・ウェイ:作, ガブリエル・バー:画) 世界中で妊娠していない女性から子どもが生まれるという異常事態が発生。天才発明家(にして実は宇宙人)ハーグリーヴズは、7人の子どもたちを引き取り「世界を救う」ため“アンブレラ・アカデミー”を設立…
映画化を切っ掛けにした傑作選なので既読が多かったのが残念だけど、改めて読み返してもやっぱり面白かった。以下、印象深かった作品のメモ。 「アジャストメント」:実際は被害者であって、大迷惑を被っている市井の市民である主人公が、結末、体制側に恐縮…
中堅の編集者ダビッドは社長直々に特命を受ける。曰く「トマス・マウドを探せ!」彼はこの出版社の屋台骨である『螺旋』の作者だったが、極度の秘密主義で社長にすらその正体を明かしておらず、しかも完結編を送ってこないまま音信不通になってしまったのだ…
この短篇集に関していえば、いわゆる長嶋有的手法が限界に来ているのかな、という印象でした。大雑把に言えば、普通だったら時間の経過に耐えられないような固有名詞を敢えて使用し、「あるあるネタ」で読者を共感させ、その搦め手から普遍的な感情に着地さ…
ここは辺境の植民星サン・パウロ。荒くれ者の探鉱師ラモンは酒の喧嘩で大使を殺してしまったことから、ほとぼりが冷めるまで密林の奥地に逃避することにした。ところがひょんなことから異星種族の巣を発見してしまう。捉えられたラモンは彼らの下から逃走し…
文明の基盤が「呪力」と呼ばれる念動力に置かれている遠い未来。人々は頭脳労働に従事し、肉体労働はバケネズミという遺伝子操作された鼠を使役することで賄われていた。一見穏やかに見える小さな共同体。しかし早季は社会を律する厳格な「倫理」に歪さを感…
あまり乗れませんでした、ということを先ず記さねばなりますまい。いじわるな言い方をすれば、いかにもクリエイティブ・ライティングコース出身らしい頭でっかちな内容に感じられて。「英語圏受けするエキゾ趣味」で彩られているのもなんだか鼻に付く。確か…
裏社会ではその名を知られたジャックが故郷に帰ってきた。不自然な死を遂げた兄の、その理由を探るため、そして復讐を遂げるため・・・ リメイクにあたる『追撃者』はほとんど話題にもならなかったけど、淡々とした無駄のないストーリーテリングが好みで、年…
同じ作者の『夜はわが友』が大好きだったので、姉妹編ということで期待したのだけれど・・・え、これで自選傑作集?というくらい肩透かしでした。何と言うかツイストのためのツイストという感じで、オチを読んで「なるほどね」と確認する感じ。まあ個人的に…
今頃になって漸く読みました。何だか流行っている時分は手を出せなくて。今更ネタバレもないもんだ、とも思うのですが、もしかしたら内容に触れてしまっている箇所が出てくるかもしれません。以下、感想メモ。 ・ライトノベルとの類縁性や、ふかえり=綾波説…
新潮クレスト・ブックスの惹句は、個人的にはしっくりこないことがよくあって、この短編集も曰く「荒涼として」「ねじくれた」「根源的な怒り」、なんだけど、実際読んでみると意外とそんなことはなかったですね。むしろオフビートなユーモアでもって語られ…
夏目漱石の『彼岸過迄』を思い出しました。互いを思いながらも成就しない恋愛。そんなに卑近な話に矮小化しないで!という謗りを免れないなと思いつつあえて書くと「恋愛って、やっぱりタイミングが大切なんだよね・・・」ということですね。大学生が誰かの…
今年出た本、ではなくて、個人的に今年読んだ本のベスト5です。振り返ると(映画も豊作でしたが)今年は手に取った本がみなどれも面白くて、充実した読書ライフだったように思います。(相変わらず量は読めなかったけれども・・・)普通だったら確実に5位…
冒頭、かなりの分量を割いて主人公フランクの送る日常の描写が続きます。ここから分かるのは彼が些細なことも疎かにしない「流儀」のある男だということ。思い出したのは『高く孤独な道を行け』で、ニールが師であるジョー・グレアムの「靴磨きや朝食を作る…
うーん・・・「新訳」は完全にひとつの市場になったけど、「新訳」のよくない側面が出ているといった印象。堅い調子のいわゆる翻訳文体が嫌いじゃないという個人的な好みは差し引いても、間違った方面に迎合するような翻訳が・・・ちょっと如何なものか?ま…
近作の『恋文の技術』や『宵山万華鏡』は安定していたものの手癖だけで書いている感があって、自己模倣の袋小路でこのままやせ細ってしまうのだろうか、と心配していたのだけれど、杞憂でした。よかった。 新興住宅地に暮らす「ぼく」は、日々の研究に余念が…
映画公開にあわせた日本独自編集の短編集(という企画だったもの)。超定番の「二万フィートの悪夢」はさておき、概ね水準作といった感じで、おっ?となる未読作がなかったのが残念。(個人的には『激突!』が粒ぞろいで良かったのですが。確か文春文庫の『…
各方面で激賞されていたので期待値がやや上がりすぎていたのかも・・・思ったよりあっさりな読後感でした。ただクライマックスに向けてドライブされるストーリーテリングの妙は、さすがに筆者だけあって安定感がありました。(顧みるに『ボビーZ』はこの作…
アンソロジーはやっぱり玉石混交ということが多くて、特に(この短編集もそうですが)「発注系」ではまあ3つくらい良いなという作品があれば上出来だと思うのだけど、そういう意味では十分以上に充実していたという印象でした。 さて、今回のくくりは「ポー…
17歳のレフは死んだドイツ兵からの略奪行為でソ連軍に捕まってしまうが、あわや処刑かと思われた時、同房の青年脱走兵コーリャと共に奇妙な任務を負うことで猶予を得る。それは軍の大佐の娘の結婚式のために、卵を一ダース、5日以内に調達するというもの…
結構既読作品が多かったのがちょっと残念でした。ビッスンに関しては2冊目なので(それをいったらスタージョンは3冊だけど)、ウィル・セルフとかマーゴ・ラナガンみたいな知らない作家を紹介してほしかった。 それと奇想に仮託した現実社会への異議申し立…
「激情型の登場人物たちが織り成す波乱万丈の大ドラマ」のような先入観がロシアのこの頃の小説にはあったのだけど(さらに『カラマーゾフの兄弟』を読んでから、より一層その思いが強く刷り込まれたのだけど)、この短編集に関していうと全然違いました。だ…
アルコール依存症、宗教、傷つけてしまった妻への呵責の念、外圧ではなく、自らの内圧に耐えかねて崩壊していく個人や関係。人と人とが関わっていくことには大変な困難が伴うけれど、それでもなお、希望というものは人間同士の関わりの中にこそ見出されるべ…
人類が破滅の淵にまで追い詰められた「世界Z大戦」から10年。国連の戦後報告書作成担当者である主人公:インタビュアーは、ようやく回復の緒に就いた世界各国を周り、様々な場所、立場で「ゾンビ戦争」に関わった人々から証言を得る。無機質なレポートに…
著者の本は鉄板と聞いて。なるほど読ませます。テーマごとの列伝形式になっているのでメリハリがあってよかったですね。世界史専攻の身としては、やはりシャンポリオンのロゼッタ・ストーン解読のくだりが面白かった。 第二次世界大戦を背景にした作品で好ん…
最近、①学校を舞台にした、②コミュニケーションの困難さをテーマとしている、③女性作家の作品が目立つ気がします。自分が見たり読んだりした範囲だけでも『太陽の坐る場所』『告白』、そしてこの小説。 クラス内のグループ同士の暗闘やヒエラルキーといった…
巻末の訳者あとがきでも触れられていますが、「崖っぷちに追い詰められたときの、傷ついた人間の一瞬の光彩」を鮮やかに切り取った短編集。ブコウスキーの作品のような「俗性を極めた先に垣間見える聖性」のようにも思われたし、タフな語り口はヘミングウェ…
いみじくも解説において、作家の作風をチェーホフ派とモーパッサン派に大別しているのだけど、前者は物語に大きな起伏がない代わりにしみじみした余韻を残すもの、後者はプロットのツイストに重きを置くもの、という要旨。確かにモームは後者なんですよね。…
昨年結構話題になっていたノンストップ医療?アクション。実際に読んでみたら、ストレートな活劇というよりは余談と注釈が本文を乗っ取る勢いという、チャック・パラニュークを彷彿とさせる作品でした。(明示されている訳ではないけれど、「教授」の存在が…