とどめの一撃(マルグリット・ユルスナール)

 夏目漱石の『彼岸過迄』を思い出しました。互いを思いながらも成就しない恋愛。そんなに卑近な話に矮小化しないで!という謗りを免れないなと思いつつあえて書くと「恋愛って、やっぱりタイミングが大切なんだよね・・・」ということですね。大学生が誰かの部屋で集まってする飲み会の三次会みたいな結論で相済みません。
 もっと穿った見方をすると、「外的・内的な要因に阻害されて成就しない恋愛」というものは、個人的にはどちらか一方のかくあれかしという願望/妄想じゃないかと思っているのだけど、解説を読むと作者のパーソナルな経験が色濃く反映された作品のようで。延々と(今となってはどうしようもない)過去の経緯についてグルグルと出口のない思索に耽るところや、主人公を男側に設定した一人称という(テーマからすると)一種倒錯した語り口も含め、なんだかそういうところは三島由紀夫風だねえ・・・と思ってたら実際に三島に関わる作品も残してるんですね。すごく腑に落ちました。そういう感覚は洋の東西を問わないんだな。
☆☆☆
※冒頭の作者による解説に「信頼できない語り手」の旨が力いっぱい書いてあるのが印象深いです。