2008-01-01から1年間の記事一覧

Y氏の終わり(スカーレット・トマス)

研究者アリエルは「Y氏の終わり」という奇書の存在を知る。その本は、現存が確認されているのが1冊きりの上、読んだ人間が行方不明になるなど呪われるといういわくつきの小説だった。彼女はふとした偶然からその本を手にすることになる。それは「人の心」…

パンズ・ラビリンス(ギレルモ・デル・トロ)

ギレルモ監督のフィルモグラフィーは、テーマ性(あるいは監督の趣味性)が強い作品と完全に娯楽を志向している作品に大別できると思います。(ex.前者『クロノス』『デビルズ・バックボーン』、後者『ブレイド2』『ヘルボーイ』)今作を伝え聞くところでは…

スリザー(ジェームズ・ガン)

開幕、「ニキビがひどい人」などの所謂「映画的でない顔」のモンタージュが多数続いた後、主人公が語る「適者生存」の進化の授業につなぐという演出に、意地悪で悪趣味系の映画なのかとちょっと構えてしまいましたが、全然そんなことはなく、極めてウェルメ…

パルプ・フィクション(クエンティン・タランティーノ)

学生時代にリアルタイムで見て以来?の再見。「パルプ・フィクション」以前以後で娯楽映画のスタイルが変わった、という道標的な作品として今では位置づけられているこの映画。与太話、群像劇、容赦ない暴力描写、時制のシャッフルといったところが後続の作…

蒸気駆動の少年(ジョン・スラデック)

「奇想コレクション」はあくまでエンターテインメント小説ということに軸足を置いている選集だと思っていたので、この飲み下しにくさはちょっと意外だった。(とはいえ、娯楽作品から超シュールなものまで振幅の大きい短篇群なので全部がそうとは言い切れな…

大人になったら

最近、昔のプログラム・ピクチャーを少し観るようになったので何となく雰囲気が掴めだしたのだけど、「日活無国籍アクション」ってありますね。少年時代熱中していたケイブンシャ『全怪獣怪人大百科』(最近復刻されたのかな?)の「怪傑ズバット」の紹介キ…

The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire(円城塔)

目にするまでは忘れていた、記憶の片隅のそのまた隅に眠っていたような「名セリフ」「定番の言い回し」をサルベージしてくる手法が、脳の痒いところに手が届く感じで快感なんだけど、この感触、何かに似てる・・・と思ったらパーリスさんだった。 ☆☆☆1/2

黒い玉(トーマス・オーウェン)

人間の罪の意識をメタファーに仮託して描く、クラシックな味わいの作家。収録作では「雨の中の娘」のように、悪夢的世界でありながら一種の美しさがあるような物語が好みだったので、同じテイストの作品がもう2、3あれば個人的には高評価だったのにと思う…

野獣の青春(鈴木清順)

映画史的には所謂「清順美学」が開花した作品という位置づけになるようで、構えてしまったけれど物語は普通。そして普通に面白かった。 素性の知れぬ流れ者ジョー。風のように現れた彼は野本興業のシマを荒らしまわり、その腕を買われて用心棒に収まる。常人…

ブラッド・ダイヤモンド(エドワード・ズウィック)

いきなり大きいこというと、人間は本能的に「地獄巡り」の物語を娯楽として欲する生き物なのではないでしょうか。創作の分野(小説、映画、漫画)を問わず、ジャンルを問わず、古典では『神曲』しかり(読んだことないけど、大きいこといったついでに)、映…

7(キリンジ)

正直言って全肯定はできなかったというか、アルバムでいうと「For Beautiful Human Life」的にダレ場がある構成だったのです(シブめ路線?)。また、好きな曲が前半4つに集中してしまっているのも個人的にはバランスが悪くて。ネットで感想散策すると、他…

プラネット・テラー(ロバート・ロドリゲス)

『デス・プルーフ』が自分の欲求に忠実であることを徹底した末に「ある種の洗練」を達成していたのに対し、好きなことをやり散らかした挙句散漫になってしまった、悪く言えば「意欲的な失敗作」であったように感じた。徹底して下品だから引いた、なんてこと…

F16<デビルスフライト・ウォーバーズ2>(ジョナサン・モストゥ)

前情報なしで観て衝撃を味わっていただきたい逸品。参考情報:主人公の上司がアン・ソンギに激似。 ネタバレ→要はアメリカ版『太陽を盗んだ男』。モストゥのソリッドな演出が予算以上の作品に仕上げている。思うにお金がない方がいい作品つくる人なんだと思…

ハマースミスのうじ虫(ウィリアム・モール)

ワイン商キャソンは人間観察が趣味という些か変わった人物。彼は同じクラブの会員である銀行重役の只ならぬ振る舞いから、彼を恐喝した狡猾な犯罪者の存在を知る。義憤から犯人を追い詰める決意を固めたキャソンであったが、手がかりは余りに茫漠としていた…

ROOKIES

「ごくせん」とネタ的にかぶってるところもあるのに勝負に出たなという感がありますが、村川絵梨が「セクシーボイス・アンド・ロボ」の100倍かわいらしく撮られている点だけでも作られた価値があると断じたい。 しかし彼女も「弾け損ねた朝ドラ女優(ex.…

スケルトン・クルー〈3〉ミルクマン(スティーヴン・キング)

キングの第一短編集その3。「おばあちゃん」は普通の人々が心に抱えるダークサイド(老人介護を家族の誰が受け持つのか?)に踏み込んだキングらしい意欲作、と見せかけてオチはそんな大ネタなの?ってところに着地。でもスーパーナチュラルな要素に逃げた…

鉄コン筋クリート(マイケル・アリアス)

描き込みとアニメートという意味では超絶技巧的なんだけど、箱庭的世界観の作りこみこそが主目的であって、キャラクターの言葉やなんかは映画としての体裁を整えるためのエクスキューズなのではないかと思われた。それぐらいステレオタイプな物語。それが監…

サンダーボルト(マイケル・チミノ)

タイトルだけだと骨太の男臭いアクション風だけど、原題は『Thunderbolt and Lightfoot』でして、実は男二人の名前(愛称)ということで、肩の力の抜けたロードムービーなのだった。 アオリで撮られた抜けるような青い空が印象的。男同士の友情を超えた微妙…

ネットとすりこみ

先日『パラダイス・ナウ』を観て、自分の不明を反省し、その後onweb.to←この記事を読んで、確かに『ミュンヘン』はいささかアンフェアだったかもと思い始めていたのだけれど、今度また『ミュンヘン』を見直してみると、記事でいわれているほど極端に不公平で…

高木ハツ江

「今日の料理ビギナーズ」の主人公のおばあさん以外のキャラ(娘の敏子や孫、その他)は出来上がった料理をモサモサ喰らう画が動物的でちょっと怖えぇ、って思ってるのは僕だけかしら。

クローバーフィールド(マット・リーヴス)

『トランス・フォーマー』において、「足元からみる怪獣映画」は飛躍的に進歩した感がありましたが、この作品で行くところまでいったという印象。(笠井アナもいってたけど)手持ちふらふらカメラにCGがよく馴染んでいて、動的合成もこなれてきたという感…

デス・プルーフ(クエンティン・タランティーノ)

俺はつくづくタランティーノの撮る画が好きなんだな、と思った。この作品は特に自分で撮影監督もしているし。スコーンとした終わり方も最高。 それとラップダンスが!・・・あれ?君バタフライっていうんじゃないの? ☆☆☆☆

有頂天家族(森見登美彦)

京の狸の頭領としてその名を響かせた父を失った後、阿呆息子呼ばわりの下鴨四兄弟はそれでも平穏な日々を送っていた。年を重ね、かつての栄光を取り戻さんと次期選挙に打って出る長兄。しかしそこには対抗馬である叔父の姦計が巡らされていた・・・ 作者は早…

マイ・ブルーベリー・ナイツ(ウォン・カーウァイ)

スローモーションのカット、多すぎるだろう。香港の時より割り増しだったくらい。トレードマークだから(えぇ?ダリウス・コンディだったの!)仕方ないというレベルではなかった。 そもそも村上春樹的なこじゃれセリフに、欧米の俳優的な演技を過剰にしたよ…

プレミアムって何なんすかね

最近ジーパンが高くて当たり前になって閉口してるんだけど、それ以上に「股上が浅くて腰ばき仕様」というのがレギュラーモデルになってるのがつらい。シャツがすぐずるずる出てくるので面倒くさい。皆さんはどのように対応されてるのだろうか? あとダメージ…

キング随想

先日『深夜勤務』所収の「波が砕ける夜の海辺で」を読んでいて、なんとなく既視感というか既読感があって、何だろうなとつらつら考えていたら長嶋有の『エロマンガ島の三人』所収の「女神の石」だった。 「波が砕ける〜」は後に『ザ・スタンド』として発展す…

の・ようなもの(森田芳光)

80年代の恥ずかしさを延々と見せ付けられるルドヴィゴ療法的な何かだった。 このトーンはしかし、見覚えがあるなと思い返してみると『シブガキ隊ボーイズ&ガールズ』でした。それもそのはず監督同じだし。『ドクタースランプ』の同時上映で仕方なく観たの…

ナイトシフト〈1〉深夜勤務(スティーヴン・キング)

最初期の短編集。さすがに若書きの感があるけれど、映像化された作品の割合が非常に高い。挙げてみると『地下室の悪夢』『マングラー』『地獄のデビルトラック』『ブロス・やつらはときどき帰ってくる』。と収録10作中4本。(と思ったら、「戦場」が『バ…

裸のランチ(デヴィッド・クローネンバーグ)

この作品と『イグジステンズ』の関係は、何となく『ブレードランナー』と『ブラックレイン』の関係に似ているような気がする。それぞれ後者はエンターテインメント要素を増量した焼き直しという感じ。それがダメというわけじゃなくて、どちらも好きなんです…

パララックス・ビュー(アラン・J・パクラ)

この当時(1974)の映画は、本当に政府とか体制に対する不信感が強かったんだなという世相を感じさせる。作品としては黒幕が漠然としていて全容が掴めないシュールな展開が面白いんだけど、悪くいえばマンガ的で、『カンバセーション・・・盗聴』や『コ…