研究者アリエルは「Y氏の終わり」という奇書の存在を知る。その本は、現存が確認されているのが1冊きりの上、読んだ人間が行方不明になるなど呪われるといういわくつきの小説だった。彼女はふとした偶然からその本を手にすることになる。それは「人の心」という未知の世界の扉を開く鍵となるものだったのだが・・・
うーん、最後まで乗れなかった。(本に巡り合うまでは結構ワクワクしたんだけど。)主人公(破滅型アバズレ系)に共感できなくて。
面白かった点も。例えば物語中に「聖水」が登場したら、普通はその扱いは神聖なアイテムとして(あるいは反対にインチキグッズとして)一貫していて、それが物語のトーンを規定するものだけど、この小説では「昔ダンジョンズ&ドラゴンズをプレイしてたら聖水がらみのイベントがあったことを思い出した」というように存在が相対化されてしまう。また後半、哲学的SFみたいなストイックな方向に進むのか、と思わせた途端に「CIAくずれの黒服の男」というB級サスペンスみたいな敵キャラが登場する。要は全体をあえてガチャガチャした印象にしている感じ。あまりないタイプの小説ではあるんだけど。
☆☆1/2
※エロスと特殊能力の接続という点でニコルソン・ベイカーの『フェルマータ』を思い出したのは僕だけですか?