スローモーションのカット、多すぎるだろう。香港の時より割り増しだったくらい。トレードマークだから(えぇ?ダリウス・コンディだったの!)仕方ないというレベルではなかった。
そもそも村上春樹的なこじゃれセリフに、欧米の俳優的な演技を過剰にしたような演出、インプロヴィゼーション的な展開、というのが監督作品の基本要素ですが、それをあちらに持ち込んだら・・・なんだかものまね芸人の真似を本人がやっているような違和感が発生していた。とくにレイチェル・ワイズ。「ハリウッドスタイルの演技」という記号が、表層で空転しているような。今回あちらの役者というフィルターを通すことで、監督の演出の独特さに初めて気が付いた気がする。
それはさておき一番残念だったのは、ウォン・カーウァイに期待しているのは実は物語的な面白さの方なんだけど(『欲望の翼』の空中ブランコみたいな話者の交代。あれには魔術的な魅力があったと思う)、やっぱり語り口のほうに重きが置かれているように感じられた点。『天使の涙』あたりから期待してるのとちょっと違うかな、という感はあったのだけれど、『花様年華』で基本に戻ってきた風もあったので、今回はどうなっているか期待と不安半ばで観てみたら・・・うーんエピソードもちゃんと廻せていなかったような。いろいろあって内面の変化がありました、というには挿話の数が足りてない印象を受けました(尺が不足しているという意味ではないけど。ストーリーテリングの経済性の悪さなのかな・・・)。一度他人の脚本で撮ってみて欲しいですね。
☆☆☆