最初期の短編集。さすがに若書きの感があるけれど、映像化された作品の割合が非常に高い。挙げてみると『地下室の悪夢』『マングラー』『地獄のデビルトラック』『ブロス・やつらはときどき帰ってくる』。と収録10作中4本。(と思ったら、「戦場」が『バトルグラウンド』として最近TVムービー化されてるんですね。エミー賞まで獲ってる。ということは半分も!)
キューブリックの『シャイニング』を見て、「ここにキングはいない」と酷評した彼が、実際に自身で監督した『地獄のデビルトラック』は「どの口がそんなことを・・・」と観た人の失笑をかったものですが、原作であるところの「トラック」は名作『霧』の習作的な印象で、可もなく不可もない感じ。
むしろ映像化されていない「子取り鬼」や「灰色のかたまり」のように、平穏な日々での些細な違和感が、描写を積み重ねていくうちにいつの間にか異界への入り口になるような、彼岸と此岸の狭間を描いた物語の方がキングの上手さが堪能できるような気がします。まあ、そういった小説ならではの語り重視の作品だからこそ、良し悪しに関わらず映像化されていないということかもしれませんが。
しかし「何かしら手を打たないととんでもない事になるのが分かっているのに、惰性にまかせて致命的なある瞬間まで動こうとしない」という人間の性向を描かせたら右に出るものがいませんね。
☆☆☆1/2