2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

茶の味(石井克人)

タイトルから連想されるのは小津映画的「古きよき時代の日本映画」。実際、今までアッパーな作風で知られた監督の、しかも外国の市場も視野にいれた(カンヌ出品)作品でもあるので、スローなスタイルで日本の情緒的世界を撮るという方向性の変化には多少な…

最後の一壜(スタンリイ・エリン)

カテゴライズするならば「奇妙な味の短編」ということになるのだろうけれど、不思議と理不尽なオチ(例えると「笑ウせーるすまん」チックな)ではなくて、割とポジティブなベクトルに向いているため、ロアルド・ダールの諸作のようにイヤーな気分になること…

犬にもなれない男たちよ(アーウィン・ショー)

学生時代、所謂ニューヨーカー派の作品を集中して読んでいた時期があって、ショーの作品に出会ったのもその中の1冊としてだった。「洗練された都会小説」というジャンルではどうやってもアメリカ作品に敵うものが日本にはない。それはその国の文学の成り立…

願い星、叶い星(アルフレッド・ベスター)

ベスターの文体はあからさまにパルプ小説の匂いがする。もちろんそれは狙い通りであって、クリシェであるパーツからいかにして目新しいもの、ショッキングなものを作り出せるか、という作者のチャレンジのように思われる。 ただ今の視点でみると、郊外の一軒…

堕天使のパスポート(スティーブン・フリアーズ)

とにかくキウェテル・イジョフォーの演技に尽きる、と思う。のっぴきならない理由によって国を追われている男。登場時にはなんかパッとしないなあと思ったのに、結末に至るころには逞しく頼もしい男として実に魅力的に映る。 演技力があるのはもちろんだろう…

暗殺者(ロバート・ラドラム)

6月下旬には「ボーン・スプレマシー」が発売になるので、復習の意味もこめて原点にあたろうかと手に取った。「最後の暗殺者」を読んだときにも感じたのだが、シンプルな話を持って回ったように語る、というか。僕の中の作者のイメージは「サルまん」で大長…