ジャッジ・ドレッド(ピート・トラヴィス)

 いつもの仕事のつもりで乗り込んだ高層ビル、しかしそこには数において圧倒的に勝る犯罪者の群れが!というシチュエーションは完全に先日観た『ザ・レイド』と一致してるんだけど、予算はなくても心意気と工夫で魅せるぜ!という志においても一致していたのが嬉しい誤算でした。
 かといって、背伸びしすぎて馬脚を現すといったこともないさじ加減がまた絶妙で。自分たちに与えられたバジェットでできることはなにか?ということを相当考え抜いた結果がちゃんと作品として結実している。例えばスローモーという「時間の経過を主観として果てしなく引き伸ばす麻薬」が蔓延しているという設定なのだけど、ゴアシーンの超ハイスピード撮影(的描写)が観客への眼のご馳走としてフックになるのみならず、伏線アイテムとしてちゃんと回収される周到さだし、同道する研修生※1はテレパスなんだけど、テレパスなんて描写に最もお金がかからない超能力じゃないですか、という点も巧い。しかもエピソードは必要最低限の要素※2に絞ってランタイムは95分という潔さ。最高でした!
☆☆☆☆
※1凛とした横顔が素敵なオリヴィア・サールビー。まあこの要素が『ザ・レイド』との最大の相違点かもしれませんね・・・
※2研修生を連れているんだから、当然「新人が仕事に対して持つ葛藤」は語り落としできない要素なんだけど、そのエピソードが高層ビル住人の人間模様や、ドレッドの人となりまでをも描くという極めて「語りの経済性」の高いストーリーテリングで。脚本は微妙な作品も多いアレックス・ガーランド(製作も兼務)なんだけど、今回はいい意味でどうしちゃったんだ?