オーガストウォーズ(ジャニック・フェイジエフ)

 なんか昨日見た夢の話なんだけど、なぜかロシアに住んでて、さらになぜか若い女性になってるの。それで幼い息子が紛争地帯に置き去りにされてるっていうんで助けに行くんだけどさ…みたいな映画でした。本当にどういう脈絡でこんな夢みたんだろう?といった風情の夢幻的な作品。

 ちょっと前に一部好事家の間で、ロシア軍全面協力のロボットファンタジーがある、と話題になってたけど、あれか!と思って見たのですが、その実態はプロパガンダ映画でしたね。だから『エネミー・ライン』などのように、話半分で真に受けすぎないで観るべき作品だと思います。

 とはいえ、ミリタリー関係はかなり気合が入っていて、それどころか極端な破壊描写も多いので、最初あたりの民間バス強襲シーンとか雨と降り注ぐ砲火などはむしろ『宇宙戦争』を思い起こすほど。だから不勉強だったのですが、文字通り「8月戦争」と呼ばれるグルジアとの紛争がベースになっていたとは知らなくて、異世界からの攻撃に巻き込まれたんだと思って、つまりSFアクション(子どもの想像、妄想かと思っていたら、いつの間にか現実が侵食されていた、みたいなやつ)と思い込んでいたんですよね…

 作り手が意図する以上にクセがある映画で、主人公のクセーニアは母親であるにも関わらず少女時代を抜けきれない不安定さを垣間見せるし(見た目の印象もあるけど)、紛争への方針を検討する閣僚の一人は「ここは冷静であるべき」とひとり奮闘するのだけど、(プロパガンダ映画でありながら)腰抜けだったり日和見主義者という描写はされてない。必ずしも出来は良くないと思うけれど、そういうディテールが不思議と印象に残る作品でした。

☆☆☆

※エクスタシーはふりですよ、というのは『恋人たちの予感』のいただき描写だな、と思いながら観てたのだけど、冒頭にそのものズバリでDVDのジャケットが写っていたんですね。気づかなかった。