原題はThey Shall Not Grow Oldだから、「彼らが年を取ることはなかったろう」というような含みを持たせた題の方がよかったのでは、と思いましたが、それはさておき。最初は、現在において文書記録や日誌を朗読しているのだと思ってたのだけど、解説を読むと保管されていた音声記録だったそうで、映像もだけど、そういった内容を今に至るまできちんと保存している管理体制に敬服しました。
とはいえ、やはり映像を24/秒のフレームに補完した技術が凄くて、(塹壕戦の悲惨さは知識として知ってはいたものの)いわゆるコマ落ちかつ白黒のカタカタした映像の印象で、チャップリンの『担へ銃』※的な牧歌的な戦争をイメージしてしまいがちなところ、当時の戦争の日常がまざまざと再現されていて臨場感が段違いでした。でもよく考えたら、そのオリジナルフィルムが撮影された環境は、今みたいにデジタルカメラで機動力がある訳ではないし交換フィルムを抱えてなのだから、あれだけ接写するのはすさまじいものがありますよね。
内容面では、ドキュメンタリーのスタイルとして、いわゆる俯瞰的な「現在から顧みた当時の状況説明」を排して、ひたすら個人の視点を積み上げていくことを選択しているのが肝だったような気がします。(一兵士の感想としては100%事実なんだけど、全体の状況を考えたときに世界の真実とイコールではない部分がある。ということを行間が示唆している。)そういう意味では観客にリテラシーが求められる作品だと思いました。
ところで、メディアが発達していない頃だし、英としては「勝った」戦争なのに、帰還兵は歓迎されなかったというのが意外でした。そういう厭戦ムードというのはベトナム戦争くらいからと思い込んでいたから…でもやっぱりそうだったんだろうなという気がしました。
☆☆☆1/2
※テーマそのものは反戦風刺映画なんですが。